医学界新聞

 

'99 Japan Kidney Weekを日本腎臓学会と共同企画

第44回日本透析医学会が開催される


 第44回日本透析医学会が,さる6月25-27日の3日間,黒川清会長(東海大)のもと,第42回日本腎臓学会(会長=東海大 堺秀人氏,日程=26-28日)との共同企画として,「'99 Japan Kidney Week」と銘打ち,横浜市のパシフィコ横浜で開催された。
 本企画は,「透析医療は腎機能を喪失した方々に対する医療であり,わが国は世界に誇れる成績をあげているが,透析医療にかかわる医療人は,もっと広く深く腎臓の構造と機能,そして腎疾患の知識が必要であると同時に,治療を受けている患者と透析医療をもっと知る必要がある」との主旨で,合同開催となったもの。また,「透析医療は,コメディカルスタッフの支えとともに医療機器の存在は不可欠」との意図から,「サイエンスとアートとテクノロジー」を本学会のテーマに据えた。

合同大会ならではの企画が多彩に

 本学会では,開会講演として(1)「これからの透析医療と腎不全対策」(黒川清氏),(2)「人の命-透析医療を見据えて」(日鋼記念病院 大平整爾氏)をはじめ,招聘講演「Cardiovasculer Risks in End‐Stage Renal Diseases:Treatment Strategies」(カナダ・マックギル大 Sarah Stobo Prichard氏)などが企画された。また,両学会合同シンポジウムとして(1)「糖尿病の生涯」(司会=東女大 馬場園哲也氏,岡山大 槇野博史氏),(2)「Ca,骨代謝-保存期から透析期までの管理(司会=東京逓信病院 深川雅史氏,岡山大 清野佳紀氏)の2題,さらに合同ワークショップ2題,'99 Japan Kidney Week特別セッションとして,「わかりやすい腎臓病の基礎シリーズ」13題が行なわれた。
 一方,透析学会の企画としては10題の教育講演や,4題のワークショップの他,パネルディスカッション「高齢者透析患者の支援-通院困難患者の透析を誰がどこで診る」(司会=信楽園病院 鈴木正司氏,金山クリニック 江崎眞知子氏),ミニシンポジウムなどを企画。なお,同学会の口演およびポスターによる一般演題発表は1723題の発表が行なわれた。

腎不全対策は生活改善から

 日本における透析患者は,年間で1-1.5万人増えており,現在は約19万人との報告がある。その年間医療費は約1兆円。また,近年では糖尿病性腎症が急増しており,「21世紀初頭には,透析導入患者の原疾患として現在第1位の糸球体腎炎を上回るだろう」と予測されていたが,昨年末のデータによるとすでに逆転し,原疾患の第1位となっている。さらに,糖尿病患者は全国で約690万人とみられ,そのうちの2割強が糖尿病性腎症の患者である。
 このような背景の中,今学会のオープニングを飾り,黒川清会長が「これからの透析医療と腎不全対策」と題し,開会講演を行なった。
 黒川会長は,「19万人いる透析患者のうち,10年以上透析を続けている患者が25%を超え,その2/3は60歳以上。さらにその半数以上は65歳を超えている。一方で新規透析患者の40%以上は,同じく65歳以上という状況であり,透析患者は老齢集団となっている」と述べ,透析医療の範囲では解決しえない老齢化に伴う社会的問題もあることを指摘した。また黒川氏は,アメリカの透析の状況について,透析患者数30万人,年間死亡率20%。年間に7万人が透析導入をしているが,毎年6万人が死亡,1万人が脳死腎移植を行なっていると概説。日本の死亡率は9%であるものの,移植率は1%にも満たないことも報告した。
 その上で,黒川氏は慢性腎不全対策として,(1)腎臓移植,(2)CAPD(持続性自己管理腹膜透析),(3)糖尿病性腎症,(4)慢性腎不全進行に関する基礎研究の必要性をあげ,各々に解説を加えた。
 まず(1)については,異種間(豚)臓器移植の可能性について,英米では狂牛病や倫理的問題はあるものの,すぐにでも実施できる状況にあることを報告。さらに人工腎臓の開発とその可能性についても触れた。また(2)に関しては,CAPDの利用が増えない理由として,「コストが高く,全体的な透析医療費は変わらない。価格を下げればより一般化する可能性はある」とする一方,耐用年数に開発の余地があることを示唆。さらに(3)の糖尿病性腎症の発症予防としては,アンジオテンシンブロック,血糖コントロール,低蛋白療法などをあげたが,その根本である糖尿病対策が必要とし,「食べすぎ・運動不足など,生活スタンスの改善が重要」と指摘した。
 まとめにあたり黒川氏は,これから増えるであろう在宅透析および高齢者の透析対策,コストエフェクティブ面からみた大規模施設型治療への転換などに触れるとともに,「どうして腎臓が悪くなるのか,医療者がともに考える必要がある。将来的には,“腎臓病学”と“透析医学”が相携えて研究・論議できる場の設定が望ましい」と述べた。
 医師,看護職をはじめ,関連するコメディカルスタッフからも多くの参加があった今合同開催は,まさに黒川氏の述べる「共通の場」の第1歩となるものと位置づけられる,内容のある学会となった。