医学界新聞

 

“Midwifery and Safe Motherhood:Beyond the Year 2000”

第25回ICMマニラ大会が開かれる


 第25回ICMマニラ大会が,さる5月27日,フィリピン・マニラ市のフィリピン国際コンベンションセンターで開催された。
 ICM大会は,第2次世界大戦の期間を除いて,1922年から3年ごとに開かれており,9年前の第22回のICM大会は日本の神戸市で開催された。以後,日本の助産婦にとってICM大会はかなり身近なものとなった。ちなみに,今大会の日本人参加者は100人に及んだ。


ICMの目的

 「ICM」はInternational Confederation of Midwives(国際助産婦連盟)の略称で,世界64か国79団体の助産婦が加入する組織である。日本からは,「日本助産婦会」と「日本看護協会」,そして「日本助産学会」の3団体が加入している。
 その定款には,「連盟の目的は,世界の国々の母親,乳児および家族に提供されるケアの水準を向上させるために,助産婦教育を高め,助産の技術と科学の知識を普及させ,助産婦団体と自国の政府との関係について必要に応じて支援と助言を行ない,母性保健ケアの供給を図り,また独自の権利を有する専門職者としての助産婦の役割を発展させることにある」とその目的を定めている。つまり,世界の母子の健康と幸福を守ることを使命としている団体である。

“Safe Motherhood”

 またICMは,WHO(世界保健機関)やUNICEF(ユニセフ)とともに,1987年の「第21回ICMオランダ・ハーグ大会」以来,開発途上国の助産婦を対象として「大会前ワークショップ」を開催している。これは,同年にWHOが提唱した「Safe Motherhood:安全に母親になること(当初50万人と言われていた世界の妊産婦死亡を2000年までに半減させる運動)」を推進するために,とりわけ妊産婦死亡の大部分を占める開発途上国の助産婦の実力を向上させることを目的としたものである。
 今回の大会でも会場の至るところで「Safe Motherhood」が話題になったが,現在先進国と開発途上国は,それぞれ別の課題を抱えている。
 開発途上国では周産期死亡が大きな課題となっている一方で,先進国では出産における医療の過剰介入が問題となっているのが実情である。しかし,両者ともその違いを理解しつつ,「“Safe Motherhood”は地球上の共通した大きな問題である」という助産婦たちの認識は,今大会でもかなり浸透していた。

第25回ICMマニラ大会

 世界の助産婦が一堂に集う「ICM大会」は,ICMの活動の中でも最大のイベントに位置づけられ,助産婦の国際交流を推進する場となっている。
 第25回ICMマニラ大会のテーマは「Midwifery and Safe Motherhood:Beyond the Year 2000(21世紀の助産と母性の安全)」。大会会長はアリス・サンツ・デ・ラ・ヘンテ氏(フィリピン統合助産婦協会会長;写真)が務め,世界63か国(非加盟国を含む)から1000名の参加者が集い,盛大な大会となった。
 開会式では,精神科医でもあるフィリピンの大統領夫人,ルイサ・P・エクセルシト・エストラーダ氏の講演もあり,助産婦という仕事を高く評価し,参加した世界中の助産婦と,そして14万人を数えるフィリピンの助産婦たちを勇気づけた。
 今大会の学術集会のプログラムは,午前の前半に基調講演,後半に6つのカテゴリー((1)女性の健康増進,(2)乳幼児と児童の健康増進,(3)安全な母性,(4)伝染病,(5)助産教育,(6)カウンセリング)の講演が,また午後は,分科会での一般演題の発表,そしていくつかのワークショップが行なわれた。世界中の助産婦が,いま現在直面している問題や力を入れている研究について発表し合い,活発な意見交換がなされた。

日本看護協会主催による「アジア・ナイト」

 今大会では,日本の助産婦たちも活躍し,8人の助産婦が英語による口演を行ない,ポスター発表は16題に及んだ。
 また,日本看護協会主催による「アジア・ナイト」が初めて開催された。
 フィリピン,タイ,台湾,日本の助産婦たちによりそれぞれの国の出産における文化などが発表され,集った多くのアジアの助産婦たちが文化の多様性を実感した。また同時に共通点も見出し,「私たちは同じアジアという地域の中にともにいる」という一体感をも確認することができた。
 その他,社交行事として開会式後には歓迎レセプションが,大会終了前夜には「フィリピン・ナイト」があり,参加者たちは民族衣装を身にまとい,同じ助産婦として,国境を越えて親睦を図った。フィリピンの助産婦たちの手厚い運営によって6日間にわたって行なわれた大会は,無事幕を閉じた。同じ目的と願いを持つ世界中の助産婦がひとつになった大会であった。
 なお,次回大会は2002年4月,オーストリア・ウィーンにおいて開催される。

 今大会の詳細は,『助産婦雑誌』(医学書院刊)53巻9号(8月末発行)の全面特集号「第25回ICMマニラ大会」で詳報される。