医学界新聞

 

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第49回日本病院学会が開催される


 第49回日本病院学会が,さる6月10-11日の2日間,西村昭男会長(日鋼記念病院理事長)のもと,札幌市の北海道厚生年金会館,他で開催された。なお本学会では,西村会長が「新しい医療の枠組み」として『医療科学』を提起し,「原点から考えなおす医療科学-輝かしい未来への挑戦」をメインテーマに据えた(2346号にて既報)。本号では,メインテーマに沿い,「原点から考え直し,輝かしい未来への看護の挑戦として,どのような役割があるか」が討論された看護部門のシンポジウム「看護,新しい世紀の役割」を報告する。なお,看護職による一般演題発表は150題を超え,全体の1/3以上を占めた。

新しい世紀での看護の役割

 上泉和子氏(青森県立看護大教授)を座長に開かれたシンポジウムには,中野夕香里氏(日本医療機能評価機構),菅田勝也氏(東大助教授),鶴田恵子氏(東医歯大病院看護部長),村嶋幸代氏(東大助教授)の4人に加え,上泉氏もシンポジストとして登壇し意見を述べた。
 中野氏は,医療評価事業における看護,ケアの評価について語るとともに,評価の実態からみた看護の課題を提示。科学的根拠に基づく看護過程の展開,事例データに基づく看護ケアの見直しなどを指摘した。また,患者の権利尊重,インフォームドコンセントに基づく医療提供体制,患者の相談対応,患者サービスの改善,安全管理などが「病院の取組みとして必要」と述べた。
 菅田氏は,看護サービスの経済的評価に関する「健康回復に対する看護の寄与-その経済的側面」を口演。平均在院日数や新看護体系看護料における手術有無での比較結果などを報告し,看護における有害事象発生と医療費との関連性を説いた。
 本年4月に行政職(横浜市)から東医歯大附属病院の看護部長に就任した鶴田氏は,「院長としての視点での看護部長職をめざし,白衣を着ない看護部長をめざしている」との考えを示した。一方で,看護キャリア開発の必要性については,「臨床実践,看護サービスの実践,マネジメント,コミュニケーション,教育・研究に関する能力などがキャリアには必要」と述べた。
 村嶋氏は,地域看護の視点から,(1)地域での在宅療養を責任を持って支える役割,(2)企業家としての看護職,(3)健康な暮らしやすい地域社会を創る役割など,看護の自立と責任に関して口演。また,滋賀県水口町での24時間看護体制の実態を紹介しつつ,看護職が24時間在宅ケアを支えることの必要性と重要性について述べた。
 上泉氏は,看護教育の現場が何を考えているかなど,新しい世紀での役割を担う看護職を育成するための看護教育に関して発言。看護系大学と臨床現場の統合の必要性や,臨床教育に科学的指向を持つ必要性を解説した。