医学界新聞

 

第22回プライマリ・ケア学会開催


 さる6月26-27日,つくば市のエポカルつくば(つくば国際会議場)において,土屋滋会頭(筑波大)のもと,第22回日本プライマリ・ケア学会が行なわれた。メインテーマは,「21世紀に求められる保健・医療・福祉-少子高齢化社会におけるサービス提供の多様性と質の向上をめざして」。
 学会では,土屋氏の会頭講演「卒前医療実習の展開とその意義」,二木立氏(日本福祉大)による特別講演の他,シンポジウム(1)「在宅ケアとケア・マネジメント」,(2)「生活習慣病への先進的アプローチ」,(3)「在宅ケアにおけるリハビリテーション医療の展開」,他など5題が,またパネルディスカッション「プライマリ・ケア医,総合診療医と病院医療」,自由集会「医療過誤を防止する」など多彩な企画が組まれ,良質な医療とは何かを模索する場となった。

在宅ケアとケアマネジメント

 シンポ(1)(司会=日医大 竹内孝仁氏,日本プライマリ・ケア学会 今高國夫氏)では,最初に関寛之氏(国立身体障害者リハセンター病院)が,土浦市で取り組むケアカンファレンスを紹介。これは医療関係者だけでなく,患者や家族,ボランティアや行政の福祉担当らも参加するもので,地域における在宅ケアネットワーキングの意義を示した。続いて竹内孝仁氏が,現在のケアマネジメントとケアプランは,ケアマネジャーによる「サービス計画(ケアパッケージ)」と,直接のケアスタッフ(訪問看護,ホームヘルパー)によるプランとアセスメントが存在するという2重構造を抱え,混乱を招いていることを指摘した。
 続いて,在宅医療に「生活者のとしての視点」が重要とする中嶋啓子氏(なかじま診療所)は,今後の在宅ケアにおいてADL,IADLだけでなく,拡大日常生活(趣味,仕事など)が大きな意義を持つとし,この3つは同時に行なわれるべきと主張。次いで森本益雄氏(森本外科・脳神経外科医院)は,自身の施設における在宅医療中断例を分析したところ,「介護者の負担によるストレス」が大きな原因と判明。診療所における在宅医療には,「家族や患者が必要な時に入所でき,また在宅に戻ることが可能となる良質なバックアップ施設との有機的な連携が重要」とした。訪問看護の視点から藤村淳子氏(野並訪問看護ステーション)は,「訪問看護は患者の生活を整えて状態を悪化させないケアだけでなく,健康人を病気にさせないケアを提供できる。看護婦は在宅において医師を必要としない環境をつくるべき」と述べた。
 演題終了後のフロアとの討議では,在宅における高度医療や,ターミナルケア,在宅死をどうとらえるかなどの問題が浮き彫りされた。最後に竹内氏は「受け手の満足感をもって在宅ケア全体を論議すべき」とし,結びの言葉とした。