医学界新聞

 

第12回国際がん研究シンポジウム開催


 がん研究振興財団の主催による第12回国際がん研究シンポジウム「乳がんの基礎と臨床」(組織委員長=横浜労災病院長 阿部薫氏)が,さる4月26-28日の3日間にわたり,東京・築地の国際がんセンター国際研究交流会館において開催された。
 「対がん10か年総合戦略事業」および「がん克服新10か年総合戦略事業」の一環として,1988年から毎年開かれている本シンポジウムは,1つのテーマについて,国内・海外で活躍する第一線の研究者たちが一堂に会して行なわれており,今回のテーマは『乳がん』であった。

友好的,積極的なディスカッション

 杉村隆氏(前国立がんセンター総長),C. K. Osborne氏(テキサス大・米国)のオープニングの挨拶に続き,阿部氏が日本と欧米の乳がんの違いについて問題を提起。これに沿って3日間の討論が進められる形となった。
 特に,1日目のLaszlo Tabar氏(Falun Central Hospital・スウェーデン)の口演では,一般に「腫瘍の大きさに関わらず,見つかった時点ですでに全身に転移している可能性が大きく,全身病として診断・治療をしなくてはならない」と言われている乳がんに対し,「それは昔の話で,発見が早ければ(腫瘍が小さければ)コントロールでき,ほぼ確実に治療できる」と発表し,会場の注目を集めた。また,福富隆志氏(国立がんセンター中央病院)は,「日本の乳がんは家族性が20%,米国では40%」と,多くの日本人のデータを詳細に分析し,遺伝性乳がんの日米比較を行なった。
 2日目のOsborne氏の口演では,日本では曖昧にされてきた「予後因子」と「予測因子」の区別をはっきりと定義し,オーダーメイド治療への足掛かりとした。また,明石-田中定子氏(国立がんセンター中央病院)の,「CTでも温存手術の範囲を決めることが可能。コストベネフィットもよい」という発表には,各国の参加者から驚きの声が上がった。
 3日間を通して友好的かつ積極的なディスカッションが続いた本シンポジウムでは,いくつかの点で日本と欧米の違いが示されたが,生活習慣の欧米化に伴い,相違点の解消の可能性も示唆された。また,外科的治療や化学療法,放射線治療から,スクリーニング,ホルモン療法などへの移行が予想される中,そういった新技術の導入に対する明確な考え方が,日本の研究者の間に欠けている点も浮き彫りとなった。