医学界新聞

多様化,高度化する整形外科医療のニーズに応えるために

第72回日本整形外科学会で看護フォーラム開催


 第72回日本整形外科学会が,腰野富久会長(横市大教授)のもと,さる4月8-11日の4日間にわたり,「国際協調と21世紀へ飛躍する整形外科医療」を基調テーマに,横浜市のパシフィコ横浜で開催された。なお,今学会最終日の11日には,学会特別企画として「整形外科看護学・理学療法学フォーラム」(腰野富久委員長)を企画。同フォーラムは,昨年開催された第71回日本整形外科学会(徳島市)での「整形外科国際看護フォーラム」を継いだ開催となったが,多数の看護職らが参集した。

チーム医療として連携を図るために

 同フォーラムは,「医療が高度に専門化すると同時に,一方では超高齢化社会を迎えつつある現在,骨格系,神経系,運動機能系の保健・治療・リハビリテーション(以下,リハビリ)を受け持つ整形外科領域では,整形外科の専門知識を持ち,臨床経験の豊富な看護・リハビリ体制作りが一段と重要性を増す。この要請に応えるために,看護職と理学療法・作業療法士ならびに医療関係従事者が一堂に会し,チーム医療として連携を図るべく,多様化,高度化する21世紀へ飛躍する整形外科医療のニーズに応えるべく整形外科的疾患の建設的な討論をしたい(開催趣旨書より)」との趣旨で開催。
 なお同フォーラムでは,(1)整形外科周手術期看護のあり方,(2)高齢者骨折の看護とリハビリ,(3)慢性関節リウマチ患者の看護とリハビリ,(4)脊髄損傷患者の看護とリハビリの4つセッションの他,米・独からの外国人演者による特別講演が行なわれた。

患者のためのスペシャリティを

 各セッションでは,まず2名の演者による口演発表の後に,フロアを交えて討論をするという形式で行なわれた。セッション(1)「整形外科周手術期看護のあり方」(座長=東女医大教授 土方浩美氏,横市大浦舟病院看護部長 沼尻光恵氏)では,最初に梅津はるみ氏(済生会川口総合病院手術室婦長)が登壇し,「整形外科領域における周手術期看護」を口演。その後に早川美和子氏(藤田保衛大病院リハビリ科長)が「術前患者評価と術後リハビリへの移行」を口演した。
 梅津氏は手術室の看護に関して,「訪室は当然のことながら,手術室の中だけには限らない手術室看護」のあり方を強調。また,手術時における局所麻酔の併用の欠点として「痛みを感じないために,過度の安静状態による組織の圧迫から神経障害や循環障害を引き起こし,術後の症状の判定に支障をきたすことがある」と述べ,「脊椎の手術は長期間の固定による術後安静が続くため,特にこれらの障害が起こりやすい」と指摘した。
 また梅津氏は,整形外科看護のポイントとして,感染予防と固定による障害予防をあげた。前者に関しては,CDC(米疾病管理センター)のスタンダードプリコーションを解説するとともに,「各施設にスタンダードプリコーションに則ったマニュアルが必要」と述べた。その上で梅津氏は,術前からの患者に対する病棟看護職と手術室看護職による十分なアセスメントの必要性や,整形外科領域の知識・技術,リハビリ看護の概念を持った看護職のニーズが今後ますます高まることを強調した。
 一方早川氏は,整形外科周手術期におけるリハビリ部門と看護部門の連携を強調。「術前患者評価と術後早期リハビリにより廃用性症候群などを予防できるが,そのためには看護部門との協働が重要となる」と指摘した。早川氏は術前患者評価に関して,その目的は「手術前の患者のADLなどを把握することにより,術後の治療目標が立てやすくなり,術後早期からのリハビリ移行を可能にすること」とし,看護職の術前訪室と同様に,患者の心理的サポートを担う役割があることを述べた。
 さらに,術後早期リハビリについては,「安静状態から廃用性症候群につながることがほとんどのため,安静期間を短縮することで廃用性症候群を避けることができる」とその重要性を指摘。「絶対安静時期が過ぎしだい健常部位の訓練を開始し,全身機能を維持,向上させること,早期からの関節可動域訓練,筋力増強訓練を開始することが予防につながる」と述べた。その上で早川氏は,「術後早期リハビリをスムーズに進めるためには,患者の継続支援のためのチームカンファレンスなどで各部門間の共通理解が必要」と,患者中心の医師,看護部門とのコミュニケーションの重要性を説いた。

高齢者のリハビリ看護

 一方,「高齢者骨折の看護とリハビリ」(司会=横市大リハビリ部長 安藤徳彦氏,横市大看護短大教授 武田宜子氏)のセッションでは,佐藤利恵子氏(済生会神奈川県病院)が「高齢者『転倒・転落』事故防止に対するケア基準」を口演。「看護者は,患者が転倒,転落を回避するために,危険因子予測のアセスメントを行ない,リスクに応じた予防的ケアが提供できるかが課題」と述べた。
 鶴見隆正氏(広島県立保健福祉大理学療法科)は「高齢者骨折術後のリハビリ」を口演。「寝たきり老人の基礎疾患としては脳血管障害と高齢者骨折があげられる。高齢者骨折のリハビリに関しては,施設内(入院中)にはよい成績であっても,社会(家庭)に戻ると成績が低下する」と指摘。受傷前の移動能力を把握し,家庭での生活行動にポイントをおいたADL評価を行ない,術後早期のリハビリ訓練実施の重要性を説いた。また鶴見氏は,「早期立位訓練は仮性痴呆の予防につながる」など,その有効性を示唆するとともに,「本人の意欲も大切だが,施設から地域生活までを視野に入れた医療スタッフや家族の支援も重要」と述べた。
 なお,総合ディスカッションの場では,「しなければならない抑制」や「各施設での医療事故対応マニュアルの整備」などが話題となった。