医学界新聞

 

検査と診断
画像診断のニューウェーブ

シンポジウム「画像診断技術の新たな展開」


画像診断の最新の技術展開とその可能性

 20世紀における医学の進歩の中で,その象徴の1つである画像診断は現在も着実に進化し,CT,MRIなど現在ある画像診断システムにさまざまな改良が加えられ,さらなる変貌を遂げつつある。「画像診断技術の新たな展開」(司会=順大 片山仁氏,杏林大 蜂屋順一氏)は,画像診断の新たな技術展開とその可能性について論議する場となった。
 最初に登壇した片田和廣氏(藤田保衛大)は,CTの最新技術をレビュー。(1)ヘリカルCTスキャン,(2)リアルタイムCT,(3)ハーフセコンドスキャン,(4)マルチスライススキャンなど最新の機器について,それぞれ得られる画像と特徴を紹介した。(1)は脳動脈瘤の診断に最も効果的で,血管造影と同率の診断率を有するもの。(2)はリアルタイム表示が可能なため,生検,ドレナージをはじめ種々の応用が可能となった。(3)は名前どおり0.5秒という短時間で撮影できるため,心臓などもブレがなく,また冠状動脈や心臓弁などもクリアな撮影が可能で,アーチファクトの減少が特徴。(4)は,X線の被曝が4割減少,5秒で頭部から骨盤までの撮影が可能であり,さらに動脈,骨をはじめ,どのような部位でも1回程度の呼吸停止でクリアに取れる特徴があることを披露した。
 続いて伊藤紘一氏(自治医大)が,「超音波診断技術のニューウェーブ」と題し,超音波診断の新たな展開を報告。特に現在超音波技術「第3の波」として注目を集めるコンピューテッドソノグラフィを紹介した。これは診断装置そのものがコンピュータで,直径0.2ミリのものまで抽出できるなど,ミクロレベルに近づく画像が可能となったもの。氏はさらに3次元超音波などについても触れた。

形態だけでなく機能抽出が可能に

 MRIについては荒木力氏(山梨医大)が概説。氏はMRIの進歩を(1)speed,(2)specificity,(3)simplicityの3つの「S」に集約。さらにMRIの新しい展開としてMRCP(T2強調像),ダイナミックMRI(T1強調像),EPI(Echo Planner Imaging),造影剤を用いずに血流を測定するBOLD法(f-MRI)などを紹介した。また氏は,「MRIは形態だけでなく,機能抽出が可能になった」とし,「MRIの進歩により,治療目的以外の侵襲的な画像撮影は必要ない」と協調して,口演を結んだ。
 現在1100の病院に導入されている核医学については,遠藤啓吾氏(新潟大)がアイソトープ(放射性同位元素;RI)で標識したブドウ糖によるPET検査を中心に概説。PETは現在30施設で可能で,ブドウ糖を主たるエネルギー源とする脳,心臓,がんの診断に非常に有用である。特にFDG(F-18フルオロデオキシグルコース)-PET検査は,上述の疾患における重要な診断ツールとなり,さらにRIの投与量が減少するため,安全で副作用が少なくなるなどの利点を強調した。一方,RIを用いた治療は,バセドウ病,がんの転移による痛み緩和などに有効であり,塩化ストロンチウム-89(St-89)を利用した場合,ADL良好,副作用の減少が認められたことを報告した。氏は今後の課題として,外来診療への応用や,新しいRI薬の開発などをあげた。
 最後に吉岡哲也氏(奈良医大)がIVR(interventional radiology)について最新の知見を報告。放射線診断技術の治療応用であるIVRは現在,腫瘍や血管性病変に対する血管塞栓術や血管形成術を主とした血管IVRと,血管外病変に対するドレナージなどの手技を主とした非血管IVRの2つに用いられ,最近ではメタリック・ステントの臨床応用が急速に進展した点を指摘。ステントグラフトによる動脈瘤治療の効果について述べるとともに,現在開発が進められている金属以外(poly-L-lactide)で作られた「溶解ステント」について,現在開発中であることを明らかにした。