医学界新聞

 

社会と経済
DRGのさらなる理解へ向けて

シンポジウム「DRG方式の国際比較」


 シンポジウム「DRG方式の国際比較」(司会=慶大 池上直己氏,日本福祉大 川渕孝一氏)では,欧米諸国におけるDRGの機能と特徴が示され,日本への導入の意義や課題などが検討された。
 最初に池上氏が,「DRGの中心課題」と題してDRGについて説明。「DRGは,病院の生産性を見るために1970年代にアメリカで開発されたもので,コスト面から入院患者の疾病を分類する指標である」とし,その導入に関して,「医療資源利用に関するデータベースの構築が重要であり,そこが難しい点でもある」と語った。

各国のDRG

 続いて川渕氏が,「アメリカにおける動向」を発表。医療費の抑制を目的に採用されたDRGについて,「これを支払い方式に活用するには,(1)資源のコスト係数,(2)診療報酬,(3)調整係数(地域格差),(4)政治的・技術的移行期間,の4つを考慮に入れる必要があるが,その結果として,在院日数の短縮や在宅ケア・日帰り手術の増加,クリティカル・パスの普及などの効果があった」と語った。そして日本に適用させる際の課題にも言及し,適切な分類表の重要性を提示した。
 一方,松田晋哉氏(産業医大)は,フランスにおけるDRGの状況を説明。「フランスではアメリカのようにDRGが直接支払方式に対応しているのではなく,地域医療計画のもとで,1つの指標として活用されている。その効果として,(1)医療情報の透明化,(2)地域医療計画の推進,(3)コスト意識の向上,(4)地域格差の縮小,などが得られたが,分類の精緻化や,外来への適応拡大などといった課題も抱えている」と語った。
 さらに「スウェーデンにおける動向」と題して,島崎謙治氏(厚生年金基金連合会)が登壇。医療保障のほとんどが税金で賄われているスウェーデンについて,「財政悪化に伴い医療改革(エーデル改革)が進められており,1985年にDRGが検討され始め,1994年からストックホルムの9病院で試行された」と紹介。そして,「病院の生産性の向上という肯定的な評価がある一方,『医療費削減のための単なるツールになり兼ねない』との否定的な評価もある」と語った。

DRG導入に向けて

 続く池田俊也氏(慶大)は,「患者特性とコスト分析」と題して,DRGを導入する上での問題点を指摘。「DRGを入院支払い,年間予算,地域医療計画,病院マネジメント等に利用すれば,クリティカル・パスの一般化→QOLの向上→在院日数の短縮につながる。そのためにも,原価の把握や医療の質の適切な評価が重要であり,国際的な分類も必要になる」と語った。
 また,梅田勝氏(厚生省)による「日本における動向」では,中医協の作成した183例の疾病分類が紹介され,その分類に用いるきちんとした退院時サマリーの必要性が強く指摘された。これに関連して,総合討論でも「退院時サマリーの教育はどうするか」,「退院時の病名の正確性について」,「厚生省はDRGの導入によって示された適正価格に従うのか」など,活発な議論が交わされ,DRG導入に向けて本格的な論議が始まろうとしている今,その材料となるものが提起された。