医学界新聞

 

変革する医療の中でPOSが果たす有効性

第21回日本POS医療学会開催


日本に紹介されてから26年を経たPOS

 第21回日本POS医療学会が,さる3月20-21日の両日,中木高夫会長(名大教授)のもと,名古屋市の名大東山キャンパスで開催された。日本に,「POS(Problem Oriented System)」が本格的に紹介されたは,1973年に発行された『POS-医療と医学教育の革新のための新しいシステム』(日野原重明著,医学書院刊)によってだが,以降医師・ナースはもとより,病院内に働く多くの職種によって活用されるに至った。同書に関して中木氏は,「この『POS…』出版以降に卒業した医師・看護職は,何らかの形でこの本の影響を受けており,日本の医療に与えた影響は大きい。同書が,何らかの“出版文化賞”をもらっていないのは不思議なくらい」と会長講演の中で感想を述べた。
 また同学会は,「POSによるチーム医療」の推進をめざすことを目的としているが,「日本POS研究会」として,1979年に第1回を開催。なお初の研究会は,「医療におけるPOS」をメインテーマとした。以降,POS導入から20年を経た第15回大会(1993年)において「POS医療学会」と改称し今日に至っている。
 21回目を迎えた今学会では,「在院日数の短縮化,介護保険の導入など,医療の流れが変わる中で,POSが医療に果たす有効性を再認識したい」(中木会長)との考えから,「POSによるケアインテグレーション」をメインテーマとした。
 本学会では,初日に10題の一般演題発表の他,メインテーマに沿った会長講演「ケアをインテグレートするPOS」や特別講演「癌患者さんとの診療情報の共有」(みなと医療生協協立総合病院長 原春久氏)が行なわれた。また2日目には,6テーマに分かれたワークショップおよびこれを受けたシンポジウム「POSによるケアインテグレーション-ワークショップファシリテーター揃い踏み」(司会=中木高夫氏,東海大 藤村龍子氏)が企画。また,最終プログラムとして,日野原重明理事長(聖路加国際病院)による講演も行なわれた〔ワークショップおよびシンポジウムの模様は2339(看護)号で詳報する〕。

今後の医療の方向性を示唆する発言

 会長講演で中木氏は,医療におけるすべての職種との連携をめざす医療モデルとしての「弦楽四重奏モデル」を提唱。また再編が進む今後の医療には,(1)患者の参加,(2)インフォームドコンセント,(3)診療情報の提供,(4)カルテ開示,(5)患者の自己決定がキーポイントになることを示唆した。
 一方,日野原氏は「21世紀は医療のオーバーラップの時代」と指摘し,医師・看護職は「対立の構造から重畳の時代」となると予測した。また,「アメリカでは,すでにナースプラクティショナー(NP)が当たり前に医師の役割を担っており,日本の訪問看護の現状などから見ると,日本も近い将来にはNP制度を取り入れなくてはならないだろう」と述べ,そのための情報収集およびその情報の吟味から技術へと適用させることの重要性を説いた。
 さらに日野原氏は,EBM&N(Evidence-based Medicine & Nursing),POSによるグループ診断の必要性を述べるとともに,患者自身による病歴作成など,今後は患者がPOSに参与する必要性も指摘。まとめにあたり,「これからの医療には,慢性患者のコントロールは看護職がする,患者の診断は医師だけが行なう,という認識を変える必要があろう」と述べた。