医学界新聞

 

救命困難な患者の集中治療を考える

第26回日本集中治療医学会看護部会開催


 第26回日本集中治療医学会が,さる3月3-5日に,平澤博之会長(千葉大教授)のもと,「急性臓器不全に挑む」をテーマに,千葉市の幕張メッセで開催された(本紙4月12日付,2334号で既報)。
 同学会の看護部会では,一般演題発表をはじめ,特別講演や3題の教育講演,3つのシンポジウム,パネルディスカッション,ワークショップ(各2題)が企画された他,医師部会との合同ワークショップ「救命困難な患者の集中治療を考える」が開かれた。また同部会総会では,「重傷集中治療ケア認定看護師」の教育・育成が話題となった。


ICUにおける救命困難な患者への対応

 同学会の看護部会・医師部会の合同ワークショップ「救命困難な患者の集中治療を考える」(司会=東女医大 鈴木忠氏,千葉大 倉山富久子氏)では,ICUにおける救命困難な患者への対応として,(1)医療対応(治療段階への見極め,治療方針の決定,実施),(2)チームスタッフの対応(指揮命令系統の構築,情報連絡網,勤務シフト),(3)アート面での対応(医師,家族関係者,行政・司法・保険,マスコミ対応)の側面から検討すべく6名が登壇。
 立石彰男氏(山口大)は,救命困難な患者に対する医療介入の特徴,積極的治療の継続と撤退の過程について考察。ICU在室中の76例(生存60例,死亡16例)の医療介入スコアを報告するとともに,「治療撤退後も家族への援助は必須」と述べた。
 七戸康夫氏(札幌医大)はICUに入室の白血病群21例中生存例は4割だったことや,1日あたりの保険請求額は他の疾患群より白血病群のほうが高位だが,治療成績は不良だったことを報告。「集中治療と終末期患者の尊厳の尊重が両立できるか」を今後の問題点にあげた。
 大竹一栄氏(自治医大)は,救命困難な呼吸不全症の治療戦略を考察。同大の例(1997年56例)にすぎないとしながらも,「女性は男性に比べ3倍の救命率であり,90%の的中率で予後予測ができた」と述べた。
 瀧口章子氏(千葉大)は,ICU入室の救命困難な患者とその家族への看護介入を検討。多臓器不全患者の平均在室日数は31.18日(最長190日)であったと報告し,長期臥床による褥瘡発生防止のために家族と一緒に行なう清潔ケアや,意思決定の判断材料となる情報提供の必要性を訴えた。
 今福由昌氏(兵庫医大)は,予想以上に長期ICU入室(311日)となった高度脳障害の患児の看護を通して,「集中治療とは」を考察。患児は,ICUから24時間付き添える一般病棟への転室や小児病院への転院を検討されたが,回復の見込みがないことから拒否された。この間,看護職間でも「回復の見込みがないのになぜICUなのか」などの葛藤があったことを報告した。
 角三明子氏(千葉県救急医療センター)は,治療の限界を宣告され,治療中断となった40例の重症患者家族への看護を検討。家族ケアのポイントに,家族ニーズの把握,面会の配慮,スキンシップの機会を作る,傾聴と情報交換,家族の身体・精神状態の把握などをあげた。また,「救急医療の現場では家族もパニック状態となるため,入室直後からの家族介入が必要」と指摘した。
 総合ディスカッションの場では,「家族からの圧力を受けるのは看護職」「看護職はその経験と知識を土台に,患者が可哀相だからという理由ではなく医師に進言することも必要」「看護職の意見を尊重しないと治療決定ができない場合もある」などの意見が出された他,「面会制限」「サイレントルーム」「ターミナル期とICU看護」についても議論された。