医学界新聞

 

平成10年度高松宮妃癌研究基金
学術賞および研究助成金贈呈式開催


 さる2月22日,高松宮妃癌研究基金(故・和田武雄理事長)の平成10年度学術賞および研究助成金贈呈式が,高松宮妃殿下の同席のもと,東京・丸の内のパレスホテルにおいて行なわれた。
 当基金は,癌に関する研究を助成し,わが国の学術の振興と人類の福祉に貢献することを目的に設立されており,母親を癌で亡くした高松宮妃殿下が,癌の撲滅をめざして発足させたものである。本年1月にタイで亡くなった和田理事長に代わって挨拶に立った岩崎藤子氏(同基金常務理事)は,「卓越した2件の研究と,優れた10件の研究に助成することで,癌撲滅に寄与できてうれしい。国際協力をしながら,目標に向かってがんばってほしい」と語った。
 2名の学術賞受賞者を代表して挨拶に立った北村幸彦氏(阪大医学部長)は,「症例の少ない癌には専門の医師も少なく,研究も遅れがちになるので,今後も一層の推進をお願いしたい」と語り,また,研究助成金受領者代表の渡邊武氏(九大生体防御研)は,「国際的にも高い評価を受けている研究助成を受けることができてうれしい。癌細胞の特質を解明するため,細胞癌を分子レベルで研究していきたい」と謝辞を述べた。
 学術賞受賞者,および研究助成金受領者は,以下の通り。
◆学術賞:(1)北村幸彦氏「c-kitによるマスト細胞とカハール介在細胞の増殖,分化,癌化の制御」,(2)海老原敏氏(国立がんセンター東病院長)「頭頸部癌の機能温存外科術式の開発」
◆研究助成金:(1)安達正晃氏(札幌医大)「アポトーシスによる癌転移の制圧」,(2)川畑正博氏(癌研)「Transforming Growth factor-βによる癌抑制作用の分子機構の研究」,(3)佐々木博己氏(国立がんセンター研)「癌における遺伝子増幅ユニットの構造解析とその分子機構の解明」,(4)珠玖洋氏(三重大)「癌遺伝子産物由来ペプチドの癌抗原としての同定とそれを用いた癌治療」,(5)高田賢蔵氏(北大)「EBウイルスによる発癌機構の研究」,(6)田矢洋一氏(国立がんセンター研)「p53とRB蛋白質のリン酸化の生理的意義の研究」,(7)直江知樹氏(名大)「白血病進展に関与するFLT3異常分子の生物学的意義の解明」,(8)中尾光善氏(熊本大)「癌関連蛋白質の分解による腫瘍発生機構の解明」,(9)中釜斉氏(国立がんセンター研)「発癌におけるゲノム不安定化の新しい機構に関する研究-ミニサテライト反復配列を介するゲノム不安定化の解析」,(10)渡邊武氏「免疫細胞に増殖抑制・細胞死を誘導する新たな腫瘍抗原(RCAS1)の機能解析」