医学界新聞

 

日加大学間の遠隔医療コミュニケーション

医学教育への応用めざし,東海大医学部で実験


 さる2月11日,東海大医学部(黒川清学部長)伊勢原校舎,同大東京病院,同大大磯病院,及びカナダのモントリオール大,ニューファウンドランド・メモリアル大の5施設による遠隔医療コミュニケーションの実験が行なわれた。これは厚生省が支援しているG7 Global Healthcare Application(GHAP)のパイロットプロジェクトの1つとして実施されたもので,多地点接続装置によるISDNを用いたテレビ会議システムを活用したもの。
 東海大では,この方法を用いて「東海大病院,同大東京病院,同大大磯病院の3病院間で常時使用可能なテレビ会議ネットワークを作成する。各病院間カンファレンスに適した部屋にテレビ会議システムを設置し,動画伝送,静止画伝送による教育,臨床応用に対する技術評価を行なう予定」(岡田好一助手・医療情報学)だという。

日加間で臨床カンファレンス

 今回の実験は,北米との時差を考慮し,朝8時より「臨床カンファレンス」として行なわれた。まず,長村義之氏(副医学部長)による歓迎の挨拶に続き,堺秀人氏(附属病院副院長)が「糖尿病性腎症における腎生検の分子解析」をプレゼンテーション。その後,カナダからブレンダン・バレット氏(ニューファウンドランド・メモリアル大)が「慢性腎不全患者のマネジメント」を,アンドレ・ラクロワ氏(モントリオール大)が「副腎のクッシング症候群の診療」に関するプレゼンテーションを行なった。
 途中,雑音が混ざるなど,画像よりはむしろ音声伝達の面で不安を覗かせたが,概ね順調にカンファレンスは進んだ。この様子は,例えば4つのカンファレンスルームがテレビ電話でつながっているような状態を想像すればよい。各プレゼンテーション終了後に行なわれた相互ディスカッションにも問題はなかった。
 

今後の活用に期待広がる

 本実験の責任者を務める大櫛陽一氏(東海大教授・医療情報学)は,「当面は,伊勢原校舎で毎日開催されているランチョンセミナーを大磯や東京へ中継する他,症例検討会やCPCなどへの応用を行なう」と話す。今後さらに,海外との接続実験を重ね,将来的には「留学中の教員や学生に現地の様子をプレゼンテーションしてもらったり,国際医学交流の準備学習として医学教育の中に活用していく」(長村氏)という計画もある。この日の実験も数人の学生が見学していたが,長村氏ら教員に促され,飛び入り参加し遠隔コミュニケーションの初体験に興奮した様子だった。