医学界新聞

免疫・アレルギー週間連合学会開催

アレルギー・免疫・臨床免疫の3学会合同で


 昨年11月30日-12月6日の1週間,神戸市の神戸ポートピアホテル,他において,第48回日本アレルギー学会,第28回日本免疫学会,第26回日本臨床免疫学会の3学会合同による学術集会「免疫・アレルギー週間連合学会」が,岸本忠三会長(阪大総長)のもとに開催された。この3学会がオーガナイズされ行なわれるのは初めての試み。幅広い層の医師,研究者が一堂に会し,基礎研究から臨床への応用まで熱心な討議が展開された。初日に石坂公成氏(ラホーヤ研究所名誉所長)によるオープニングセミナーが行なわれた他,会期を通して世界の第一線の研究者を招待した特別講演やシンポジウム,ワークショップなど多彩な内容で行なわれた。また,この連合学会では上述の3学会に加え,2日間にわたり国際免疫シンポジウムが開催された。さらにアトピーやリウマチ,エイズをテーマに市民公開講座が神戸国際会議場で行なわれた(関連記事)。


免疫・アレルギーシステムの解明

 昨年文化勲章を受賞した岸本氏による3学会合同の会長講演(司会=千葉大 谷口克氏)では,自身の35年に及ぶ研究生活からライフワークである「Interleukin 6-from gene to clinic」をテーマに,多くの参加者が詰めかけた。
 氏は阪大第3内科に入局後,生体防御を示す免疫機構がなぜ自身を攻撃するのかという,アレルギー,免疫のシステムを解明したいと免疫学の研究を開始した。
 1967年にIgE発見,1968年に抗体産生におけるTリンパ球,Bリンパ球の役割が解明された時代に米国留学した氏の関心は,なぜアトピーの患者にだけIgE抗体ができるのかであった。研究の進む中で,生命に必須の事象である抗体産生を調節する分子の研究をしたいという思いが,現在までの研究の原動力になっているという。
 Bリンパ球に抗体を産生させる因子には,増殖因子(IL-4,IL-5)と,抗体産生を誘導するB細胞分子因子(IL-6)の2種類であることが,80年代前半にかけて明らかになってきた。そして1986年,氏らはIL-6の構造を明らかにした。その後,この分子が単に抗体産生だけでなく,炎症における急性期蛋白の産生,血小板増加,心筋肥大,関節炎など多彩な機能を持つことが解明されていく(1988年,IL-6受容体が発見される)。

サイトカインのシグナル伝達機構

 サイトカインにおけるシグナル伝達の研究が進む中,IL-6・IL-6受容体のシグナル伝達にはgp130と呼ばれるシグナル伝達分子が重要な役割を果たすことがわかってきた。また他の伝達分子も明らかにされると,「JAK-STAT系」と呼ばれる細胞内でのサイトカイン受容体のシグナル伝達のカスケードが解明された。
 JAK-STAT系の働きが明らかになる中で,氏らは1997年にSSI-1(STAT induced STAT inhibitor)を発見。この分子はSTATが活性化されると誘導され,JAKと結合して活性化を阻止し,シグナル伝達も阻止するという,ネガティブフィードバックレギュレーションに関連するものである。さらに実験系ではIL-6-gp130-STATの信号伝達をブロックしてしまうことが認められている。一方,生体内の機能として,SSI-1ノックアウトマウスを作製すると正常に生まれても100%死亡し,このリンパ球ではアポトーシス促進因子BAXが多数発現していることから,「SSI-1は細胞死の調節に関わる可能性が大きく,生命に重要な因子であることが示唆される」とした。

IL-6と疾患の関係

 IL-6と疾患との関連については,キャッスルマン病を例に,患者のリンパ節ではIL-6が継続的に大量産生されるが,同時にHHV8(カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス)が陽性であることが認められたとし,このことから,HHV8の遺伝子産物はヒト型IL-6の遺伝子発現に関わる可能性を,さらに何らかのウイルス感染がIL-6を産生させ,それが炎症細胞の増殖因子となり発症に至るのでは,との仮説を提示した。
 その他,多発性骨髄腫との関連や,慢性関節リウマチ患者のIL-6・IL-6受容体結合をブロックすると治療効果があることを示し,氏らが開発したヒト型化抗IL-6受容体抗体の投与により患者の症状が大きく改善したことを報告した。
 IL-6における基礎研究の成果から臨床への展望を概説した岸本氏は,「まだまだやらなければならないことはたくさんある」と述べ,さらに氏の恩師であり,日本の免疫学の基礎を築いた「山村雄一氏(元阪大学長)に本講演を捧げる」として講演を結んだ。