医学界新聞

第4回白壁賞と第23回村上記念「胃と腸」賞の贈呈式が行なわれる


 「第4回白壁賞」と「第23回村上記念『胃と腸』賞」の贈呈式が,第56回日本消化器内視鏡学会総会前日の昨年11月18日,ホテルグランヴィア岡山で開かれた第38回「胃と腸」大会において行なわれた。
 今回の受賞論文は,前者が渡二郎氏(旭川医大)・他「Early Nonpolypoid Colorectal Cancer Radiographic Diagnosis of Depth of Invasion」(Radiology 205 67-74,1997),後者は飯田三雄氏(川崎医大)・他「家族性大腸腺腫症における胃・十二指腸病変の長期経過」(『胃と腸』〔医学書院刊〕第32巻4号:563-576,1997)。

Early Nonpolypoid Colorectal Cancer:
Radiographic Diagnosis of Depth of Invasion

 「白壁賞」は,故白壁彦夫氏の偉業を讃えるために創設された賞で,氏の業績を鑑みて,その選定基準を「消化管の形態・診断学の進歩に寄与した優れた研究」を対象とする。『胃と腸』誌だけでなく,関連雑誌に掲載された論文でも,同誌編集委員の推薦があれば対象としているが,今回は応募論文の中からの初の受賞となった。
 贈呈式では,早期胃癌研究会代表の八尾恒良氏(福岡大筑紫病院消化器科)は「英語の論文では初めてであり,日本の早期大腸癌研究を世界に知らしめたという意味で白壁賞にふさわしい」と讃え,選考委員を代表して吉田茂昭氏(国立がんセンター東病院内視鏡科)が,「『Radiology』というグローバルな発信ができる雑誌に,わかりやすく日本の診断学を解説したことが評価された」と選考経過を説明した。
 続いて,受賞者を代表して渡氏は「ご指導くださった共同執筆の斉藤裕輔先生,小原剛先生はじめスタッフの方々に感謝したい。高後裕先生には,白壁先生から教わったことを世界に知らしめるためにも英語で論文を書くよう激励をいただいた。1992年に当時の並木正義教授に勧められ,3年間ほど白壁先生のもと,早期胃癌検診協会で勉強させていただいた。本当に雲の上のような先生で,夜遅くまで厳しくご指導をいただいたが,その白壁先生のお名前のついた名誉ある賞をいただき感激している。白壁先生はX線,内視鏡,病理の1対1の対応を非常に大事にされ,X線を綺麗に撮れる者は内視鏡も綺麗に撮れるということで,形態学の基本は写真を撮ることだと教えられた」と謝辞を述べた。

家族性大腸腺腫症における胃・十二指腸病変の長期経過

 「村上記念『胃と腸』賞」は『胃と腸』誌創刊時の「早期胃癌研究会」の代表者である故村上忠重氏を顕彰して創設された賞で,『胃と腸』誌に掲載された論文を対象とし,消化器,特に消化管の病態解明に寄与した論文に贈られる。飯田氏は第3回に続き2度目の受賞となった。  八尾氏は「飯田先生にとってこの研究は,25年くらい前から続けている仕事であり,長期経過でその病態を明らかにした点が評価され,1つの仕事を長期間続けていくことがいかに大事であるかを実証された」と祝辞を述べた。また吉田氏は,「今回の家族性大腸腺腫症における胃・十二指腸病変の長期経過は実に20年以上の経過の中で,胃・十二指腸病変が大腸腺腫症において手術の適応,あるいは積極的な治療の対象ではないということを明確に示し,しかも,推定ではなくdefinitiveに結論を出されたことが評価された」と選考経過を説明した。
 受賞者を代表して飯田氏は「2回もこの賞をいただけるとは,本当に幸運だと思う。研究の発端を与えてくださった八尾先生,九大時代にお世話になった渡辺英伸先生(現:新潟大学1病理),外科の大里敬一先生(現:産業医大病院長),伊藤英明先生(現:産業医大第1外科)のご協力とご指導をいただいたからこそ,これまで研究ができたと思っている。川崎医大に来て5年になるが,この間もfollow-upの機会を与えていただいた九大第2内科のメンバー,木村外科病院院長・木村豊先生,酒井技師長ならびに職員の方々,また,川崎医大消化器内科の医局員にも感謝したい」と受賞の喜びを語った。