医学界新聞

癌に対する内視鏡外科手術におけるロボット工学の応用

-第36回日本癌治療学会招請講演より


 慶大の大上正裕氏は,昨年10月に福岡市で行なわれた,第36回日本癌治療学会(会長=久留米大教授 薬師寺道明氏,本紙第2313号に既報)の招請講演で,大上氏が積極的に行なっている悪性疾患(早期胃癌,大腸癌,食道癌等)に対する内視鏡外科手術の成果を発表し,近年急速に発達しつつあるロボット工学の臨床応用について,海外の研究も含めた最新のシステムを,ビデオを用いながら紹介した。
 大上氏によると,「術者の声を認識する腹腔鏡把持ロボット」は,solo-surgeryを可能にし,術者自身が術野をコントロールできるという最も理想的な手術の実現が期待されており,また,「遠隔手術指導システム」を用いると,内視鏡外科手術の経験が豊富な医師の少ない現在において,多くの施設に指導医の技術を普及できるという。これらは,いずれも臨床応用が進んでおり,さらに,鏡視下手術で最も困難と言われている縫合・結紮をスムーズに行なうロボットや,感触も伝達する手術ロボットの開発も進んでいることが発表され,内視鏡外科手術の目ざましい進歩と,実用化に向けた明るい見通しが述べられた。