医学界新聞

脳の時代


神経回路網の機能を模擬した,学習機能を持つニューロチップ。
約2.5cm×2.5cm

脳の発達には環境刺激が重要
A:通常のマウスの視覚野の画像。左右の眼から情報を処理する神経回路網がバランスよく発達している(緑と赤)
B:片目を覆って飼育したマウスの視覚野の画像。開いているほうの眼の側の神経回路網だけが発達し,覆われているほうの側の神経回路網はほとんど発達していない

アルツハイマー病の発症に大きく関与する遺伝子プレセニリン1の細胞膜断面図。tauの部分で蛋白の異常増殖が起こり,神経原線維を引き起こす

 脳科学の推進計画が軌道に乗って,政府による本格的な研究支援が始まった。本1999年には,「脳を知る」原理的な研究,「脳を守る」臨床病理学的な研究,「脳を創る」情報科学的な研究の三位一体の協力が効を奏して,目覚ましい進歩を遂げると期待される。脳を知る領域の研究は脳細胞機能の遺伝子制御と脳組織の発生分化の分子過程の解明に向かって躍進するだろう。脳を守る領域では,基礎研究の進歩が提示する創薬,再生移植,遺伝子治療の3つの大きな戦略に沿って,アルツハイマー病をはじめとする脳神経系の難病の病因解明と有効な治療法の開発が実現に近づくだろう。脳を創る領域では,脳の記憶学習機能を上回るような回路チップが作られ,実用に供されようとしており,さらに,このような計算論的,認知科学的な努力を通じて,まだ未知の意識や感情を担う脳の仕組みへの考察が進もうとしている。脳の世紀はすでに始まっている