医学界新聞

地域に根ざした21世紀の自治体病院

第37回全国自治体病院学会開催


 第37回全国自治体病院学会が,さる11月5-6日の両日,村瀬恭一会長(岐阜県立岐阜病院長)のもと,岐阜市の長良川国際会議場を主会場に開催された(本紙 2317号に既報)。本号では学会企画の中から看護に関する話題を報告する。

地域における看護教育の役割と課題

 看護教育分科会の特別講演として行なわれた平山朝子氏(千葉大教授)の講演では,「21世紀を展望した看護教育の課題-地域と臨床との連携」をテーマに,わが国の看護教育の新たな方向性が示された。
 平山氏は看護系大学での教育について,「現在,大学で看護学を専攻している18歳の人は約5万3000人。現在の18歳人口は約174万人だが,2009年には約120万人の中から5万3000人(4.4%)の人に看護学を専攻させなくてはならない。大学における看護学を正しく世に伝え,社会に対して責任を持った人材養成を行なっていく必要がある」とし,千葉大看護学部の理念と特徴を以下にあげた。(1)ヒューマンケアの立場からの健康支援を追求,(2)社会人選抜制度,(3)3年次編入制度,(4)学士授与システム,(5)周囲の医療福祉施設との連携。
 また,地域在宅ケアの教育に関して,「訪問看護を実施している病院が増えており(現在36%),独立した訪問看護ステーションも昨年3月の1804か所から本年2月の2443か所と急増している」と,在宅ケアの需要増を明示。「医療システムと離れた生活の場で,独立して看護処置や療養生活支援を行なうために,地域の中で体験することにより,人間生活の意味や社会の個別性を習得させ,家族全員の生活の営みを支えられるような看護を教育したい」と発言。「今後は,外部の支援職との連携も重要になるだろうが,共同作業の中で質を落とさないよう協力し合い,主体的な考え方ができるような教育をしていくことが課題」と述べた。

全人的な音楽運動療法

 総会特別講演IIでは,「ICUと音楽運動療法」をテーマに野田燎氏(大阪芸大助教授)が登壇。「地域の人々と医療(病院)のつなぎ役として音楽・芸術がある」という言葉で講演を始めた野田氏は,脳動脈瘤破裂,脳梗塞,モヤモヤ病の3人の患者を例に,音楽運動療法による治癒方法とそのメカニズムをビデオを使って説明するとともに,ICUとの関わり方にも言及した。
 音楽には種類によってさまざまな覚醒作用があり,その作用には個人差があること。また,立位での上下動が脳に刺激を与えやすいこと。その他,自律神経に刺激を与えることが回復に役立つという考えのもと,(1)患者が好んでいた歌,(2)トランポリンによる上下運動,(3)野田氏によるサックス演奏,(4)好きな食べ物,(5)歩行運動などを組み合わせる音楽運動療法で,多くの患者が回復傾向を示していることを発表。「垂れていた首が立つ,よだれが止まる,周囲を見渡す,笑う,などの反応は回復の兆し。経験的に,脱力状態の患者より,拘縮状態の患者のほうが回復しやすい」と指摘し,「あきらめずに,やっていけるという姿勢が大切であり,全人的な関わり方で統合的な研究を進める必要がある」と語った。また,「病院で働いている人にも音楽があるとよいが,それ以前に,空調などがうるさくて環境が整っていない」ことも指摘した。