医学界新聞

第6回「総合リハビリテーション」賞の贈呈式が開かれる


 月刊誌『総合リハビリテーション』(医学書院発行)に掲載された論文の中から,最優秀論文を顕彰する「総合リハビリテーション」賞(主催:(財)金原一郎記念医学医療振興財団,後援:「総合リハビリテーション」編集室)の本年度(第6回)の受賞論文は,慶大リハビリテーション医学教室問川博之氏・他の「こどものための機能的自立度評価法(WeeFIM)による小児のADL評価-発達検査法との比較」(『総合リハビリテーション』(第25巻6号掲載)に決定。さる9月25日,その贈呈式が東京・本郷の医学書院会議室で行なわれ,同誌編集委員会を代表した上田敏氏(帝京平成大学教授・情報学部)から賞状・賞楯・副賞(10万円)が問川氏に手渡された。
 FIM(Functional Independence Measure)は,グレンジャーらによる能力障害の評価法で,慶應義塾大学リハビリテーション教室のグループにより日本に紹介され,これまで成人の能力障害評価法として普及しつつあり,リハビリテーション看護領域でも注目されている(受賞論文の文献を参照)。受賞論文は,こどものための機能的自立度評価法であるWeeFIMを用いて小児のADL評価を,従来から用いられている発達検査法と比較しながら検討したもので,先駆的な研究として高い評価を得た。
 同賞の選考に携わった同誌編集幹事の万歳登茂子氏(和田病院)は,「問川先生の論文は編集委員・編集同人の間で最も高い評価を得ました。WeeFIMが広がってくることによって小児評価法が変わってくるものと期待しています」と選考経過と受賞理由を説明。「今後はさらに検討症例数を重ねてデータに重みづけをしていただきたい。また,小児のFIMは臨床心理の方々に使って貰える可能性があるので,その方面にアピールするとよい」と研究の継続に期待を寄せた。
 受賞した問川氏は,「小児の分野では発達という概念に重きがおかれ,脳障害や能力低下の概念は忘れられがちである。障害児の能力低下(disability)の評価法としてのWeeFIMの研究を深め,早く標準化してリハビリテーション分野だけでなく教育畑の方々にも使っていただけるようにしたい。受賞を励みにリハビリテーション医学の研究と臨床に一層精進したい」と喜びの言葉を述べた。
 同誌の創刊20周年を記念して設けられたこの賞の受賞論文は,第1回が嚥下障害に関係した臨床的テーマ,第2回がスポーツ医学関連,第3回が基礎的なリハビリテーション医学研究,第4回が心理分野,第5回が脳卒中患者の社会適応スケールの作成,そして今回はWeeFIMに関する論文となり,リハビリテーション医学の幅の広さを示し,文字通り同誌の誌名『総合リハビリテーション』にふさわしいものとなった。
 贈呈式に引き続いて行なわれた懇親会では,「毎年毎年,職種もテーマも違う方々が受賞され,文字通り総合リハビリテーション誌にふさわしい結果になっている。今年は若いドクターの受賞を喜びたい」と,この賞の生みの親とも言える上田氏が問川氏の受賞を祝福した。ちなみに本賞は6年前,上田氏が東大退官時に金原財団へ寄せた寄付金を原資として発足したものである。
 なお,今年(1998年)1年間に掲載された論文の中から引き続き第7回受賞論文が選出される。