医学界新聞

 Nurse's Essay

 カラーユニフォーム

 八谷量子


 かつて,ナースキャップと白衣は看護婦のシンボルであった。「かつて」とあえて過去形にしたのは,キャップレスとユニフォームのカラー化が進んでいるからだ。
 私の勤務している病院でも,ユニフォームのカラー化が今年の4月から導入され,それまでのモノトーンの光景が一変した。ピンク,青,緑,黄,紫,ストライプに花柄プリントまである。看護婦の間では,「自分の好みに合わせて好きなユニフォームが着れる」ことから大旨好評である。
 一方,患者さんたちの反応はというと,必ずしも好意的ではないのだ。
 「派手すぎる」,「助手さんとの区別がつかない」という意見があり,患者さんたちの中に「白衣の天使」というイメージはかなり強固に定着していることをうかがわせた。確かに,カラー化に伴って気になる点もいくつかある。色鮮やかなユニフォームは,上手に着ないとちぐはぐで下品に見えることさえあるからだ。
 茶髪に派手な化粧,おまけに濃いピンクのユニフォームでは,病人のお世話をする者としてはいかがなもの? という疑問もある。夜勤明けの疲れた顔に,鮮やかな色彩は疲労感をより増幅させて見せることもある。
 今のところ,当院でのカラー化のメリットを最大限に生かしているのは,痴呆性老人病棟である。加齢に伴い視力の衰える老人にとっては,淡い色や中間色は特に見分けにくい。白一色のユニフォームを廃止したことで,老人たちの混乱も少なくなったようだ。
 もう一言つけ加えるならば,ユニフォームであるからには機能性がまず重視されるべきである。仕事がしやすく,患者さんに安心感を与えることを中心に据えたユニフォーム作りが望まれよう。
 ユニフォームが自由に選択できるということは,個々に託された良識とセンスについても責任を持つということにつながる。「白衣の天使」という外見のイメージではなく,看護の質そのものを問われる時代の到来ともいえる。