医学界新聞

腰痛の予防と治療の普及に向けて
「骨と関節の日」記者発表会


 日本整形外科学会(理事長=黒川高秀東大名誉教授)では,広く一般の人々に骨と関節の健康を思い起こさせ,正しい知識を持ってもらうことを目的に,1994年から毎年10月8日を「骨と関節の日」と定め,電話相談室や公開講座といった記念行事を実施している。今年は,高齢化に伴い患者数の急増が予想される「腰痛」がテーマとして取り上げられ,その予防・治療法の早期確立と普及に向け,全国各地で記念関連行事が実施されるとともに,9月17日には,東京・大手町のKKR HOTEL TOKYOにおいて,報道関係者を対象とした記者発表会が開かれた。

腰痛は“疾患”ではなく“症状”

 記者発表会は,黒川氏や安部龍秀氏(日本臨床整形外科医会理事長)らの出席するなか行なわれ,腰痛を専門とする3名の整形外科医らによる発表がなされた。
 「腰痛はなぜ起こるか」と題する菊地臣一氏(福島医大)の発表では,「腰痛は疾患ではなく症状である」ことが説明され,(1)腰痛の原因が多様であること,(2)原因の特定は難しい上に重要であること,(3)治療法のガイドライン作りが遅れていることなどの問題点があげられた。また,最近の成果として,椎間板変性に遺伝的な要因が大きく関与していることや,精神・心理学的因子も腰痛の原因であることなどが述べられた。

腰痛の治療と予防

 腰痛の治療に関しては,高橋和久氏(千葉大)が発表。「腰痛は由来組織も様々であるが,脊椎由来の腰痛でも病態によって治療法が異なる」と,診断の重要性を主張した上で,代表的な疾患とその治療法を解説。「一定期間の非手術治療で改善が見られなかったり,社会生活に支障が出る場合を除き,手術治療は避けるべきだ」と語った。
 一方,予防に関して発表を行なった白土修氏(美唄労災病院)は,「腰痛に関する基本的知識を持ち,正しい姿勢と腰痛体操を習慣づけることが予防につながる」とし,人々の腰痛に対する意識の向上を訴えて会を締めくくった。