医学界新聞

「癌の集学的治療」をテーマに

第36回日本癌治療学会開催


 第36回日本癌治療学会が,薬師寺道明会長(久留米大教授)のもとで,さる10月7-9日,福岡市の福岡サンパレス他において開催された。「癌の集学的治療」をテーマに掲げ,第57回日本癌学会(9月30日-10月2日,本紙第2312号参照)に引き続いて開かれた同学会は,会長講演「卵巣癌治療のあゆみと展望」をはじめとして,特別講演,招請講演6題,シンポジウム6題,ワークショップ12題,ビデオセッション4題,一般講演1081題の他,Presidential Symposium,Tumor Panel Discussionなどが企画され,活発な議論や意見交換が行なわれた。また,学会前日には「第4回臨床腫瘍医のための教育セミナー」が,最終日には市民公開講座「癌治療の最前線-患者の立場に立つ最適な治療を目指して」が,それぞれ開催された(関連記事を掲載)。

 


「癌検診の有用性と今後の展望」

 2日目に行なわれたワークショップ「癌検診の有用性と今後の展望」(司会=愛知県がんセンター研 富永祐民氏,東北大 矢嶋聰氏)では,「癌検診の有効性評価に関する研究班」(班長=東北大 久道茂氏)の報告書(本紙第2306号参照)を軸に,同研究班の構成メンバー6氏の報告を踏まえて,有効性をいかに正しく評価し今後どのように活かしていくべきかが論じられた。

胃癌・子宮癌検診の問題点

 胃癌検診に関して発表を行なった深尾彰氏(山形大)は,検診受診が胃癌による死亡率を40-60%減少させていることを示した上で,受診率の低下の問題をあげ,「(1)個人のニーズやリスクへの対応,(2)高濃度バリウムや血清マーカーなどの新技術の導入,(3)検診システムの見直し等が今後の課題」と語った。
 また,子宮癌検診に関しては佐藤信二氏(東北大)が登壇。前記研究班の子宮癌部会の研究報告として「30歳以上には有効である」ことを紹介するとともに,「介入研究や観察研究による正確な評価や,適切なスクリーニング等が,今後重要になるだろう」と述べた。

乳癌・肺癌・大腸癌検診の実情

 乳癌検診に関して報告した大内憲明氏(東北大)は,前記報告書と同様,視触診法での検診には否定的な見解を示し,一方,マンモグラフィの導入に関しては積極的にその有効性を認めた。
 続く金子昌弘氏(国立がんセンター中央病院)の肺癌検診に関する評価は,前記報告書の評価に比べてやや肯定的であったが,それでも他臓器と比較すると精度が低いことを認め,「CTは処理能力が問題だが,それでも精検のためにはCT導入や,新たな検診技術の開発が必要」とした。
 一方,大腸癌検診に関しては,樋渡信夫氏(東北大)が発言。免疫便潜血検査の有効性は認められていることから,免疫2日法に関する研究の成果を発表し,「免疫2日法では,診断前1年以内に受診歴を有すれば死亡率を減少させることができる」ことを示唆した。

これからの癌検診

 癌検診の有効性の総括として,辻一郎氏(東北大)は,「検診による早期発見が医療費の抑制につながる。ただ,検診の費用効果を考えると,現在は臓器によって経済効果が大きく異なる」とし,「効率の改善を進めるとともに,実感しにくい検診の効果をもっと適切に評価すべきだ」と語った。
 また,今後の展望として,久道茂氏(東北大)は,(1)情報公開とインフォームドコンセント,(2)検診の見直し,(3)判断の提示の責任とその必要性を課題にあげるとともに,「やる価値のないものは,うまくやる価値もない」と訴え,「検診になじむ癌となじまない癌があることを認識し,検診の目標を明確にし,その寄与度を考えることが大切だ」と語った。