医学界新聞

「クリティカルパスと看護記録」をテーマに

聖ルカ・ライフサイエンス研セミナー開催


「クリティカルパス」に参加者殺到

 聖ルカ・ライフサイエンス研究所(日野原重明理事長)が行なっている研究事業の一貫である「医療情報の効率化に関する研究-日本の現在の診療録,看護記録,その他をどのように変えるべきか」の第3回セミナーが「クリティカルパスと看護記録」をテーマとして,さる9月19日に,東京の聖路加看護大学において開催された。
 今セミナーは,井部俊子氏(同研究所評議委員・聖路加国際病院副院長)が司会を務め,クリティカルパス(以下,CP)の基礎から臨床での実践まで全8題の口演が行なわれた。なお今セミナーには定員を大幅に超える申込みがあり,今回は東京近辺の病院から婦長,主任を中心に約500名が参加。これまでに行なわれたセミナーでの過去最高の参加数となった。また,申込み者が多いことから,同趣旨のセミナーが後日開催されることが,日野原理事長から報告された。厚生省が進めるDRG導入などの医療施策を受けて,CPの導入を検討する病院が増えている実態が垣間見えた。

クリティカルパスとは

 同セミナーでは,まず阿部俊子氏(群馬大)がCPの歴史や社会的背景,基本原理などを解説。利点として「患者用のCP作成に伴うインフォームドコンセントやチーム医療の充実,共通言語としてのツール,在院日数の短縮,ケアの標準化」などをあげ,経済的評価,患者・スタッフの満足度などについても解説を加えた。一方デメリットとしては,「チームワークが悪いとCPは完成しないため,チームワークの悪さがばれる」などを指摘した。
 続いて菅野由貴子氏(東大)は,文献からの考察として,米・ニューイングランドメディカルセンターのK.Zander氏によって1985年に初めて登場したCPの報告は1994-95年に急激に増加したことや,心疾患,周手術期患者のケア,脳血管疾患急性期などに報告例が多くみられることを発表。アメリカの報告ながら,「股関節置換術で在院日数が5.8日から3.92日に減少,費用は8,797ドルから8,130ドルへ削減された」と紹介。
 その上でCP法に期待される効果としては,「在院日数の短縮からの資源の節約,結果からの評価はまだ少ないものの医療の質の向上,患者・職務満足度の向上」をあげた。
 岩井郁子氏(聖路加看護大)は,医療法の「医師,歯科医師,薬剤師,看護婦その他の医療の担い手は,医療を提供するにあたり適切は説明を行ない,医療を受けるものの理解を得るように務めなければならない(第1条の4 第2項)」を紹介。法律上,看護婦もインフォームドコンセントを行なう必要があることを述べた。
 また,CPの課題として,クライアント・患者志向の医療と医療従事者志向の医療の対立があることを指摘するとともに患者はどのような診療情報・診療記録を求めているかなどについても検討,解説を加えた。

クリティカルパスはどう使われるのか

 休憩後のセッションでは,臨床現場でどのようにCPが使われているのかが報告された。まず竹股喜代子氏(亀田総合病院)は,1999年2月から導入予定の「ナビゲーション・ケアマップ」について,開発途上としながらもコンピュータシミュレーションを披露。看護診断も組み入れた「看護過程支援システム」としての機能と看護記録への適用を解説したが,CPと同様のものとして利用への可能性を予感させた。
 また,従来からCPの導入が検討されていた東京都済生会中央病院(高橋忠雄氏)が「脳血管障害患者のCPと記録の検討」を,済生会熊本病院(石田由起子氏)は「CPの記録化」を述べ,さらに高井今日子氏(聖路加国際病院),藤田真弓氏(青梅市立総合病院)からも報告がなされた。
 なお,同研究所で開催されるセミナーについての問合せは下記まで。
・(財)聖ルカ・ライフサイエンス研究所
 〒104-0044 東京都中央区明石町10-1
 (03)5550-4101/FAX(03)5550-4114