第2311号 1998年10月26日


「看護診断の評価って何?」をテーマに

第3回NDC公開セミナーが開催

武澤 真(東京医科歯科大学医学部附属病院,NDC会員)


 第3回NDC(Nursing Diagnosis Conference:看護診断研究会)公開セミナーが,さる9月5日,東京・広尾の日本赤十字看護大学講堂において,「看護診断の評価って何?」をテーマに開催された。
 今回は,全国から臨床看護婦(士)や看護教員約60名の参加者があり,臨床の現場において難しいとされる「看護診断の評価」について意見が交わされた。

看護診断の評価が意味するものとは

 まず,午前中には川島みどり氏(健和会臨床看護学研究所長,NDC副代表)を司会に黒田裕子氏(日赤看護大教授,同代表),松浦真理子氏(東京厚生年金病院婦長),今井恵氏(日赤医療センター)によるパネルディスカッションが行なわれた。黒田氏は,看護教育・研究者の立場から看護診断の評価の位置づけについて,「看護過程は情報収集→アセスメント→全体像→看護診断(健康問題の抽出)→実施→評価の一連のプロセスである」とした上で,評価は看護アウトカム(看護介入の結果として患者に観察されるであろう結果)の指標にのっとり,できる限り客観的に評価することの必要性を強調。「評価は,患者の反応から看護アウトカムが結果として導かれたかどうかを見ることが必要で,患者の反応が結果を導かなかった場合,立案した看護診断に問題がある」と述べた。
 例えば,ケア計画の内容に問題がある場合,ケア計画の中に具体的な看護介入計画と同時に,看護アウトカムが具体的に観察可能な行動レベルで考え,明記されていなければならない。これが看護アウトカムの指標であり,この指標と患者の反応から評価する必要がある。黒田氏は,「看護者は看護過程の中で考えてきたことを客観的,科学的に考え,振り返り修正することが大切であり,臨床の現場はその積み重ねと繰り返しである」と言及。また,最近の情報として,看護介入分類(NIC:Nursing Intervention Classification)と看護アウトカム分類(NOC:Nursing Outcome Classification)についての一部が紹介された。
 次に松浦氏は,実際に看護診断を実践している管理者の立場から,どのように看護診断の評価をしているか,またその中での問題や課題について,評価の視点として看護アウトカムが達成されたか否か,あるいはその指標が適切であったかという視点はもとより,常によりよいケアを患者に提供するために,「看護診断の評価は,患者への看護が終了した結果を評価するだけではなく,看護過程の中で常に行なわれていくことが重要であり,加えて全体としても評価していくことが重要」と述べた。また課題としては,「(1)個々の看護者間の看護観・アセスメント能力の育成と指導者の育成,(2)支援するサポートシステムの充実,(3)ケア提供された患者による看護アウトカムの評価の実施,(4)客観的立場で院外第3者による看護診断の評価の実施」などをあげた。
 最後に今井氏は,現在教育している立場とNDCにおける調査研究結果から,看護診断を行なう上での問題や施設の現状について報告を行なった。
 今井氏は,臨床の現場で看護診断が定着しにくい現状について,「(1)診断の意味の理解不足や定義の解釈不足,(2)特定された分類枠組みから選択しなければならないという葛藤,(3)助言を与えてくれる資源不足」を指摘。また,施設の現状では「(1)看護診断を学習した看護婦の不在,(2)診断名の理解の混乱,(3)病院全体に普及させることの困難さ,(4)看護診断の有用性に関するディスカッションの不足」をあげ,今後看護診断を導入予定の施設に対しては,「どうして看護診断を導入しようとしたのかをもう一度考えてみることが看護診断を定着させることにつながる」と述べた。

グループワークとディスカッションの中で

 午後は,NDCでは重要と位置づけている実際の患者事例(胃癌による胃全摘・胆摘,イレウスによる絶食・補液,右耳下腺腫瘍手術後の65歳の男性で,頸椎異常が認められ再入院となった。なお,事例は事前に参加者に送付され,看護診断名,看護介入計画を考えることが課題とされている)をもとに,看護診断,看護の方向性,評価についてのグループワークを行ない,その後検討された結果を発表し,ディスカッションへとつなげた。
 グループワークは,時間的制約もあり,どのグループも看護診断名をあげる困難さに時間を費やした結果となった。そのため,今回のテーマであった「看護診断の評価」まで検討できたグループは少なく,ディスカッションでも診断名に関する根拠,見解の違い,相違などの議論が主となった。あげられた診断名は,参加者の考えや思い入れ,また解決しきれない混沌とした中で,精神的側面,身体的側面,社会的側面,それぞれの視点から導かれたが,グループ間において差異は見られなかった。
 ディスカッション後に発表されたNDCの事例に対する見解では,身体的側面について一部取り上げ,説明が行なわれた。NDCではどの診断が正しいというのではなく,「いずれか」を仮診断として介入すること,その後の情報の増加によるアセスメントの充実,全体像の変化によるケア計画の修正,そして患者の反応から仮診断の適切性について評価していくことが重要だと解説。また,診断を行ない,介入しアウトカムを評価するプロセスの繰り返しが,妥当な看護診断を導き,さらなる有効な看護介入へとつながると付け加えた。
 本セミナーから,臨床の現場において今回のようなディスカッション,つまり,有効なカンファレンスの活用が「看護診断の評価」に重要であることが導き出された。また,患者情報・アセスメントから患者の全体像を捉え,看護診断を立案する段階で,現場の看護者が悩み,葛藤することが参加者の意見から明らかとなった。
 今後は,これらを反省点・課題とし,次回のセミナーに取り組んでいきたい。加えて会員の1人として,次年度のセミナーにも多くの参加者を期待したい。