医学界新聞

在宅介護報酬検討の論点が示される

厚生省・医福審 介護給付費部会より


 さる8月24日,介護保険の介護給付を審議する厚生省・医療保険福祉審議会(医福審)の第5回介護給付費部会(部会長=総合研究開発機構理事 星野進保氏)が開催され,在宅サービス(訪問・通所サービス)における介護報酬検討にあたっての主な論点が,厚生省より提示された。

介護報酬の基本構造

 まず,基本構造に関して示された論点および提案は以下の3点である。(1)地域差の勘案方法は,国家公務員の調整手当の級地区分により設定する。(2)離島等で特に移動に時間を要する場合の取り扱いには,現在の訪問看護の地域特別加算と同様,特別の加算等を設ける。(3)交通費や送迎費用は,基本的には報酬設定上評価することとし,利用者が,自らの希望により,近隣にサービスがありながら,遠方の事業者のサービスを利用する場合には,利用者に送迎や訪問の費用負担を求めてもよい。
 このうち(1)の地域差については,別の基準で評価すべきではないかとの意見が複数の委員から出された。

訪問介護・看護の報酬設定

 訪問介護の報酬設定の単位については,(1)家事援助や介護に関する行為を細分化して積み上げることにより評価する方法,(2)時間単位で設定する方法,(3)大枠でサービス(入浴,排泄の介助等)の組み合わせを設定し評価する方法,以上3つを提示し,「現場でのサービスの柔軟性を考慮すると,サービスに要する時間を念頭におき,標準的なサービスの組み合わせを考慮の上,介護報酬を設定するのが現実的ではないか」との厚生省としての考えを示した。また,直接のサービス提供以外に発生する事業所における業務(派遣スケジュールの調整および管理等)についても,報酬上の配慮が必要だとした。
 訪問介護の報酬設定は上述の包括して評価する部分(サービス内容に応じた介護サービス経費+運営管理経費)に加算部分(移動加算,早朝,夜間,休日加算等)を加えた額となる。
 なお,1997年度より予算を組み実施している事業費補助方式(サービスの提供量に応じた補助方式)での訪問介護への予算設定(人件費+活動費)は以下の通りとなっている。
【滞在型】(1単位:概ね1時間)
身体介護=2,890円,家事援助=1,790円
【巡回型】(1回;概ね30分)
昼間帯=1,450円,早朝夜間=1,810円,深夜帯=2,890円
 各委員から,「介護保険での報酬設定が本年度補助事業の予算額程度になるのであれば,マンパワーが確保できないのではないか」,「在宅へのシフトを進めるのなら,訪問介護事業の育成が不可欠であり,単価は上げるべきだ」などの意見が相次いだ。その一方,「個人,企業の負担を増やすような報酬設定は,国民のコンセンサスが得られるだろうか」など,報酬額の上昇を牽制する意見も,経営者団体や保険者側から出された。
 訪問看護の報酬設定の単位については,現在は1日定額のため,重傷者の加算等により,対象者の特性に応じた評価を行なっているが,介護保険では,訪問介護と同様に,診療補助行為等のサービスの組み合わせとそれに要する時間等による包括的な評価の方法が提起された。
 また,直接の看護サービス以外の管理業務については,現在の訪問看護療養費の中で管理療養費として位置づけられているものは,初回だけ高く(初日は7,050円,2日以降は12日まで2,900円×訪問日数),利用回数により評価が大きく異なってしまい,サービスの費用に応じた評価,要介護度に応じた支給限度額の枠内での利用等の観点から不合理であると指摘し,新たな評価法が必要との考えを示した。さらに,急性増悪等の場合の訪問看護の給付については,要介護度に応じた支給限度額の枠内では対応できず,医療保険からの給付を行なうべきであるとの見解を示した。

通所サービス,リハ,福祉用具

 通所介護(デイサービス),通所リハビリ(デイケア)については,グループ処遇であることおよびサービス提供の実態から,3段階程度の要介護度の評価を用い,通所介護の単独型施設等を除き,人員・設備基準の違いを要介護度による介護報酬上の評価に包括する方向が提起された。また,通所介護・リハビリともに時間に応じた評価を設けるかについても議論を求める同時に,食事,送迎,入浴などについてはその有無を評価すべき(加算部分)との考えを示した。
 その他,訪問入浴,訪問リハビリについては要介護度に関係なく一律の評価を行なう,福祉用具貸与の報酬設定の方法については,公定価格は定めず,実際のレンタル価格で償還する方式を基本とすることなどの方向が示された。要介護度の改善の誘因策については,要介護者単位で改善等に対する評価を行なう方法(例えば,要介護度が改善した後,一定期間,以前の要介護度により給付を行なう等),事業所・施設単位で改善等に対する評価を行なう方法(例えば,事業所,施設単位で,要介護者全員の改善状況を評価して加算を行なう等)の方法が示された。

公定価格より低い価格設定の是非

 最後に,介護保険法上,介護報酬という公定価格より低い価格を設定できるとされているが,それにより,支給限度額に余裕が生じた場合,その範囲で利用者に活用を認める案が出されたが,一部委員が,「誰が質の担保をするのか。医療保険サービスにはない発想であり,十分な審議の必要がある」とこの案を牽制した。その一方「民間の参入を促すには有効だ」との意見も出された。
 本部会では,交わされた意見を整理し,今秋以降本格的な議論に入る。