医学界新聞

21世紀における在宅ケアを展望

第8回日本看護学教育学会開催


 さる8月4-5日の両日,第8回日本看護学教育学会が,深瀬須加子会長(西南女学院大)のもと,「21世紀における看護学基礎教育の展望」をメインテーマに,北九州市の北九州市国際会議場で開催された。
 同学会では,会長講演,海外からの招聘講演「看護学基礎教育における家族看護学」(カナダ・マギール大 Laurie Gottlieb氏)をはじめ,基調講演「看護学基礎教育にフィジカル・アセスメントは必要か」(大分県立看護科学大 山内豊明氏)や,シンポジウム「在宅看護論の展開-在宅ケア・21世紀への視点」などが企画。一般演題は示説を含めて全116題の発表が行なわれた。本号では,シンポジウムの内容を報告する。


在宅看護論と在宅ケアの実践

 近田敬子氏(兵庫県立看護大),入部久子氏(久留米大)の両氏を座長に,4人のシンポジストによって開催されたシンポジウムでは,まず「看護職員の養成に関するカリキュラム等改善検討会(1996年)」の座長を務めた松野かほる氏(山梨県立看護大学長)が登壇。カリキュラム改正に伴い新たに示された「在宅看護論」について,「在宅看護は地域看護活動の1分野」と定義づけ,「在宅看護は,疾病や障害を持ちながらも在宅療養を望む患者や家族に質の高い看護を提供し,状態の改善・安定,あるいは悪化の防止や危機の回避などを家庭で充実した生活が送れるように援助すること目的としている」と述べた。
 川村佐和子氏(都立保健科学大)は,「病棟の看護をそのまま在宅に持ち込むわけにはいかない。家族を巻き込み指導し,患者中心の看護を展開すること」と在宅看護を位置づけた。また,「専門的技術ではなく,看護婦の自立に関する基礎知識や利用者の主体性を尊重する知識と技術の習得が基礎教育には必要」と述べるとともに,臨地実習として訪問看護の実践を強調した。
 地域看護の実習を受け入れる施設の立場から発言した中川紀代美氏(北九州八幡医師会訪問看護ステーション)は,学生の受け入れ体制,実習方法などをスケジュール表を提示し解説した。また中川氏は,「学生の実習を受け入れることで,スタッフの自己啓発につながった。利用者や家族の評判もよく,実習の受け入れはステーション全体としても有益であった」と述べた。
 保健福祉施設での勤務経験がある岡本栄一氏(西南女学院大)は,社会福祉の立場,保健,医療の連携の視点から「在宅看護論」を展開。岡本氏は,まず「(1)ケアサービス領域,(2)予防・強制領域,(3)住民参加の領域からなる,地域福祉(在宅)における3層構造」を提示した上で,高齢化率16.5%,人口9万3000人の北九州市若松区での在宅ケアの実践例を紹介した。また,「在宅福祉,統合とネットワーク化,サービスの多元主義,住民参加などの社会福祉の地域福祉化は,21世紀へ向けた“見える部分”であり,どう理論構築するのかが課題となっているが,介護保険導入による介護支援専門員の育成,制度の改変などは看護からも福祉からも“見えない部分”となっている」と指摘し,参加者に問題を投げかけた。
 なお,総合ディスカッションの場では,卒後教育の重要性や,臨床現場との統合教育の必要性などが論議されたのをはじめ,フロアからは,「長期入院患者が在宅へ移行しようといる中,医療の看護化がますます強化されるのでないか」との声もあった。