医学界新聞

「看護研究における臨床と教育」をテーマに

第24回日本看護研究学会が開催される


 第24回日本看護研究学会が,さる7月30-31日の両日,大串靖子会長(弘前大教授)のもと,弘前市の弘前市民会館(初日)および弘前文化センター(2日目)で開催された。
 「看護研究における臨床と教育」をメインテーマに掲げた本学会では,会長講演「看護研究における研究支援体制の模索」や特別講演「豊かなる縄文文化――三内丸山遺跡」(青森県三内丸山遺跡対策室 岡田康博氏)をはじめ,教育講演3題の他,シンポジウム「臨床における看護研究の教育的サポート」(座長=神戸市大 玄田公子氏,弘前大 木村紀美氏)を企画,また一般演題は看護教育,看護管理,地域看護,家族看護,精神看護などの分野から全319題の発表が行なわれた。


 臨床看護の現場において,看護研究が業務の一貫として定着して久しいが,科学的判断に基づいた看護実践が求められる現場での研究活動には,倫理的な問題の他にも管理組織上の問題など,さまざまな制約,障害があることも事実であろう。
 臨床における看護研究をテーマとした今学会のシンポジウムでは,「現状での問題を確認しながら,研究活動を効果的でより円滑に行なえるサポートシステムを参加者とともに議論しあい,研究活動へのサポートのあり方を見出したい」との主旨のもと4人のシンポジストが登壇し,臨床での看護研究活動時の問題や実施計画の報告,教育現場からの発言などが行なわれた。

臨床における看護研究活動を論じ合う

 中里志保子氏(八戸市立市民病院)は,「適切な指導者がなく,取り組みの遅れていた看護研究を見直すために,研究計画書を重要視するとともに外部講師に指導を依頼した」と発表。院内教育委員会との連携により,「使える生きた研究計画書が書けるようになり,学会発表を含めた院外発表が増えた」と述べ,外部の指導者よる看護研究サポートシステムの有効性を論じた。
 林圭子氏(東北大病院)は,看護短大生,院内看護婦,県看護協会主催のファーストレベル研修者などを対象に,看護研究活動の現況と阻害因子について調査した結果を報告した。臨床指導者のかかわり方について,学生の40%は「指導に個人差がある」と答えており,臨床指導者の68%が「指導に自信がない」と回答。また,看護研究の問題点としては,看護研究の進め方がわからないとする者が,ファーストレベル研修者で55%,院内看護婦が52%,学生は81%おり,阻害要因としては,指導力不足,知識・学習力欠如,強制的などをあげる一方,三交替制などの勤務体制や環境整備を指摘する回答もあった。これらから林氏は,「指導者の育成とそれを支援する組織と機構,設備の充実が必要」とまとめた。
 宮川純子氏(北大病院)は,「臨床で研究をする意味の実感が現場の看護婦にはない」と指摘し,「臨床看護研究活動を推進する中での課題」を口演。千葉大看護実践研究指導センターで学んだ経験から,「臨床における看護研究の目的を明確にすること。また,“私にもできるかもしれない”との視点から,確信を持った看護実践が行なえることを伝えることが重要」と述べた。
 最後に登壇した塩飽仁氏(山形大)は,「研究者は,研究活動を通して何を獲得したいのか。また,実践者(管理者)は何を学ばせたいのかなど,研究メンバーや研究をサポートする管理者は,常に臨床看護研究の目的を明確にしておくことが重要」と指摘。さらに,「臨床現場は研究素材の宝庫でありながら,研究方法の具体化が困難になっている。共同研究では計画を立てるところから協力体制を確立しておくこと」など,研究初期計画からのコラボレーションについて述べるとともに,研究者の研究フィールドや対象者とのかかわり方の重要性,予算を含めた研究の継続と成果の蓄積の不可欠性,コンピュータ等の機材の共同利用により,効率のよい臨床での研究活動が可能になることなどを指摘した。