医学界新聞

第57回日本癌学会総会

第36回日本癌治療学会総会 開催迫る


40周年を迎えた日本対ガン協会

 昭和33(1958)年に創設され,がん予防運動の民間推進団体として多彩な活動を展開してきた「(財)日本対ガン協会」(会長=杉村隆国立がんセンター名誉総長)が今年創立40周年を迎えた。
 高齢化社会到来の必然的な結果として,“がん死”が増え続け,1997年のわが国のがんによる死亡は27万5千人を超え,全死因の30%,1981年以来死因の第1位を占めているが,同協会は毎年9月を「ガン征圧月間」と定め,全国各地でさまざまなイベントを催している。第39回ガン征圧月間となった今年も,日本医師会との共催,厚生省・文部省,各都道府県,12大市,日本癌学会,日本癌治療学会の後援により,「検診は あなたの体の通知表 きちんと受けて がん予防」をスローガンに,9月17日の「日本対ガン協会創立40周年記念平成10年度ガン征圧全国大会」(広島市・広島国際会議場)をはじめとして全国各地でイベントを展開している。

「がん検診の有効性評価に関する研究班」の報告書

 また,さる4月厚生省から「がん検診の有効性評価に関する研究班」(総括班長=東北大医学部長 久道茂氏)の報告書が発表された。
 同報告書は,(1)「がん検診の有効性評価に関する研究」に続いて,それぞれ(2)「胃がん検診」,(3)「子宮がん検診」,(4)「乳がん検診」,(5)「肺がん検診」,(6)「大腸がん」の有効性評価を報告し,最後に(7)「Q&A」という構成になっている。久道氏は,同書の序文に「がん検診が普及するとともに国民の関心も高まり,がん検診の有効性に関するできるだけ正しい情報を国民が共通のものとして持つことの大切さが認識されるようになった」と指摘するともに,「この研究は,国内外の膨大な量の文献を丹念に読み,またそれらに対して批判的なコメントを加え,最終的には個々のがん検診に関する現状での結論と勧告をまとめたものである」と述べ,がん検診関係の情報提供や精度管理に関する事業に積極的に取り組むことの重要性を強調している。

概要を紹介

第57回日本癌学会
第36回日本癌治療学会の開催

 折りしも,第57回日本癌学会総会が阿部薫会長(国立がんセンター総長)のもとで,きたる9月30日-10月2日,横浜市のパシフィコ横浜で,また第36回日本癌治療学会総会が薬師寺道明会長(久留米大教授)のもとで,10月7-9日,福岡市の福岡サンパレスで開催される。
 今年の日本癌学会総会では,特別演題201題,一般演題2612題(口頭発表1060題,示説発表1552題)の他,サンライズ/サンセットセッション13題,シンポジウム14題,ワークショップ15題,ならびに「キューリー夫妻ラジウム発見100周年記念シンポジウム」,教育講演5題,市民公開講座が企画されている。
 一方日本癌治療学会総会では,会長講演,特別講演の他,招請講演6題,Presidential Symposium「21世紀に向けた卵巣癌治療」,シンポジウム6題, ワークショップ12題,Tumor Panel Discussion8題,ビデオセッション4題,「第4回臨床腫瘍医のための教育セミナー」,市民公開講座「がん治療の最前線-患者の立場に立つ最適な医療をめざして」などが企画されている。

(以下に両学会のプログラムを紹介)


第57回日本癌学会総会プログラム

〔シンポジウム〕(1)遺伝子治療-現状と展望(名大 吉田純,国立がんセンター 吉田輝彦),(2)がんの一次予防,二次予防(癌研 北川知行,国立がんセンター 若林敬二),(3)モデル動物を利用した発がん機構の解析(癌研 樋野興夫,国立がんセンター 津田洋幸),(4)新しい抗がん剤(金沢大 佐々木琢磨,国立がんセンター 佐々木康綱),(5)がん転移の分子機構(東大 清木元治,国立がんセンター 広橋説雄),(6)細胞周期の制御異常とがん(東大 岡山博人,国立がんセンター 田矢洋一),(7)アポトーシスとがん(阪大 長田重一,国立がんセンター 口野嘉幸),(8)薬剤耐性(東大 鶴尾隆,国立がんセンター 西條長宏),(9)家族性腫瘍の遺伝子診断-基礎から臨床まで(浜松医大 馬塲正三,国立がんセンター 横田淳),(10)ゲノムの不安定性とがん(広島大 田原栄一,国立がんセンター 中釜斉),(11)リンパ節郭清の意義-諸臓器での比較(金沢大 磨伊正義,国立がんセンター 海老原敏),(12)画像解析からみたがんの特性と自然史(福岡大 岡崎正敏,九州がんセンター 牛尾恭輔),(13)がん免疫の新しい展開(九大 笹月健彦,千葉大 谷口克),(14)がんとホルモン(癌研 尾形悦郎,国立がんセンター 山口建)
〔ワークショップ〕(1)細胞老化とがん(鳥取大 押村光雄,東工大 石川冬木),(2)がん研究への情報の活用(東大 大江和彦,国立がんセンター 山口直人),(3)がん-宿主間質相互作用を介したがん悪性化の分子機構(阪大 中村敏一,国立がんセンター 斎藤政樹),(4)がん緩和医療の問題点(広島大 山脇成人,国立がんセンター 内富庸介),(5)ヒトゲノム解析とがん研究(東大 中村祐輔,国立がんセンター 大木操),(6)がん研究における疫学の役割(愛知がんセンター 富永祐民,国立がんセンター 津金昌一郎),(7)ヒトがんウイルスによる発がんとその予防(国立感染研 吉倉廣,京大 下遠野邦忠),(8)シグナル伝達に関与する遺伝子の異常とがん(阪大 高井義美,癌研 宮園浩平),(9)炎症とがん-発がん要因としての感染症(奈良医大小西陽一,国立がんセンター 江角浩安),(10)転写制御因子遺伝子異常と発がん(埼玉医大 村松正實,東大 谷口維紹),(11)がんにおける染色体転座・融合遺伝子(京大伊藤嘉明,広島大 鎌田七男),(12)DNA損傷と発がん(阪大 田中亀代次,癌研 野田哲生),(13)胸腹膜播種の機構とその対策(都立駒込病院 高橋俊雄,国立がんセンター 土屋了介),(14)抗体療法の基礎と臨床(札幌医大 今井浩三,阪大 真弓忠範),(15)腫瘍血管形成の機構とそれに対する標的治療(九大 桑野信彦,東大 渋谷正史)
〔サンライズセッション〕(1)がん治療とアポトーシス(鶴尾隆),(2)がん臨床研究に必要な統計の基礎知識(国立がんセンター福田治彦),(3)トランスジェニックマウスおよびノックアウトマウスを用いた発がん研究(東京農大 長尾美奈子),(4)がん研究に役立つ酵母で得られた情報(東大 池田日出男),(5)がん診療とサイコオンコロジー(内富庸介),(6)H.pylori感染と胃がん・MALTリンパ腫(国立がんセンター斉藤大三),(7)細胞周期の解析法(東大 岡山博人),(8)ノックアウト・トランスジェニックマウスによる病態解明(東北大 野田哲生),(9)がん研究に役立つヒトゲノム計画(東大 高木利久)
〔サンセットセッション〕(1)がん研究に役立つDNA解析技術(国立がんセンター 関谷剛男),(2)IL‐12活性化Thl主導免疫のがん治療における生物学的意義(東海大西村孝司),(3)非臨床試験から臨床試験(国立がんセンター 西條長宏),(4)FISH法とその新しい応用による腫瘍の染色体異常の解析(東医歯大 稲澤譲治)
〔キューリー夫妻ラジウム発見100周年記念シンポジウム〕(1)キュリー夫妻ラジウム発見が意味するもの,(2)ラジウム研究とラジウム治療:その歴史的意義,(3)放射線感受性の解析:ATM遺伝子を中心に,(4)放射線感受性プロモーターを用いたがん遺伝子治療,(5)ラジウムからイリジウム治療へ,(6)高齢者の放射線治療について考える,(7)放射線治療の新方向
〔教育講演-基礎・臨床〕(1)病理学からみたがんの個性(広橋説雄),(2)遺伝子研究の臨床への応用(中村祐輔),(3)画像でがんはどこまで診断できるか(国立がんセンター 森山紀之),(4)QOLを考えた外科治療の進歩(海老原敏),(5)癌化学療法の適応と限界-抗癌剤臨床試験の重要性を含めて(国立がんセンター 佐々木康綱)
〔市民公開講座〕(1)がんになったら:インフォームド・コンセント,治療の選択(国立がんセンター 笹子三津留),(2)がんはどこまで治るのか(国立がんセンター 吉田茂昭),(3)がんと人生(作家 立川昭二)


第36回日本癌治療学会総会プログラム

〔会長講演〕卵巣癌治療のあゆみと展望(久留米大 薬師寺道明)
〔特別講演〕21世紀の癌治療-集学医療の役割(久留米大学長 平野実)
〔招請講演〕(1)抗癌剤耐性克服の最新情報(鶴尾隆),(2)Angiogenesisと癌治療(九大 桑野信彦),(3)集学的治療:白血病から固形癌へ(国立がんセンター 高上洋一),(4)担癌患者感染症に対する抗菌化学療法の基本的理念(杏林大 小林宏行),(5)癌の遺伝子治療の現況と展望(名大 吉田純),(6)癌に対する内視鏡外科手術におけるロボット工学の応用(慶大 大上正裕)
〔プレジデンシャル・シンポジウム〕 21世紀に向けた卵巣癌治療
〔シンポジウム〕(1)消化器癌に対する化学療法の諸問題:5-FUのBiochemical modulationを中心に(がん薬物療法研究会 田口鐵男,九大 杉町圭蔵),(2)癌治療効果判定の現状と将来-画像診断と他の指標の相関性(東女医大 大川智彦,近大 安富正幸),(3);癌の遺伝子診断と治療の現況と方向性(自治医大 高久史麿,岡山大 田中紀章),(4)免疫機能を温存した癌集学的治療-現状と課題(久留米大 伊東恭悟,広島大 峠哲哉),(5)高齢化社会における癌集学医療の展望(千葉大 磯野可一,国立がんセンター 阿部薫),(6)癌治療における臨床試験のあり方(徳島大 曽根三郎,筑波大 赤座英之)
〔ワークショップ〕(1)術後補助化学療法の必要性-無病生存期間,予後は改善されるか(国立名古屋病院 下山正徳,国立病院四国がんセンター 高嶋成光),(2)トポイソメラーゼI阻害剤を用いた化学療法の効果と副作用(近大 福岡正博,国立がんセンター 島田安博),(3)固形癌に対する超大量化学療法の効果-QOLと長期生存率は改善されるか,コストベネフィットは?(県立愛知病院 有吉寛,鹿児島市立病院波多江正紀),(4)癌検診の有用性と今後の展望(富永祐民,東北大 矢嶋聡),(5)Neoadjuvant Chemotherapy-QOLの改善,長期生存に与えるインパクト(北大 犬山征夫,癌研 中島聡總),(6)新抗癌剤の評価と展望(癌研 塚越茂,浜松医大 大野竜三),(7)サイトカイン療法の新しい展開(札幌医大 新津洋司郎,山口大 岡正朗),(8)癌慢性疼痛の管理の現況と問題点(国立がんセンター 平賀一陽,東北大山田章吾),(9)抗癌剤治療に伴う骨髄抑制への対処(札幌医大 工藤隆一,函館赤十字病院 赤沢修吾),(10)癌治療におけるMinimum invasive surgeryの適応と限界(都立駒込病院 高橋俊雄,聖マリア学院短大 中山和道),(11)前癌病変に対する対応と対処(盛岡赤十字病院 西谷巌,鹿児島大 愛甲孝),(12)アポトーシス誘導による癌治療(山口大 加藤紘,京大 藤井信吾)
〔Tumor Panel Discussion〕(1)前立腺癌,(2)節外性リンパ腫,(3)メラノーマ,(4)頭頸部癌,(5)非小細胞肺癌,(6)乳癌,(7)大腸癌,(8)肝臓癌
〔ビデオセッション〕(1)画像診断の進歩-3次元CT,MRIなど,(2)子宮頸癌の円錐切除術に用いられる手技-cold knife,レーザー,電気ループ,ハーモニック・スカルペルの特徴,利点,欠点,(3)各科領域における鏡視下手術の進歩,(4)癌根治手術後の形成外科的手術
〔第4回臨床医のための教育セミナー〕 (1)新規抗癌剤の効果と判定,(2)効果判定基準と薬物有害反応:最近の話題,(3)解剖学的見地からみたリンパ節転移,(4)clinical trialと統計学
〔市民公開講座〕がん治療の最前線-患者の立場に立つ最適な治療をめざして