医学界新聞

 Nurse's Essay

 夜勤に想う

 八谷量子


 夜勤明けの朝は辛い。申し送りの緊張感から解放されて帰り支度を始めると,眠気と疲労感がどっと押し寄せる。帰りの電車の中で居眠りしながらわが家にたどり着き,ベットに潜り込んでひたすら眠り続ける。
 肉体的にはきつい夜勤であるが,体調が悪くなければ夜勤そのものが嫌になることはない。24時間を通して,患者さんの様子を観察することができるし,昼間とはまったく違う患者さんの一面を知ることができるからだ。また,不眠を訴える患者さんの話を聞きながら,彼らが抱えている悩みや問題の大きさを知り,愕然とすることがある。日中はほとんど異常がないのに,夜になると徘徊したり大声をあげるお年寄りもいる。患者さん個々の生活のリズムがあり,さまざまな生活習慣を持って暮らしていることに,改めて気づかされる。
 明け方,看護記録を書く手を休めてふと窓の外に目をやると,静寂の中に少しずつ街なみが浮かびあがる。
 「こんな時間に働くなんて因果な仕事だ」と思う反面,自分が「看護婦なんだ」と強く意識させられる。選んでしまった仕事の重さと充実感を,同時に感じる瞬間でもある。
 先日,ある看護婦の職能集会に参加する機会があった。そこでは,病院における2交替制勤務の実態が報告されていた。2交替制のメリットとしては,長時間同じ看護婦がいることにより業務がスムーズで安心であること,自分の余暇時間が多く持てるようになったこと,家庭と仕事との両立がしやすくなったことなどがあげられていた。また,デメリットとしては,長時間労働で疲労感が強いこと,休憩や仮眠時間が取れないことなどが問題と指摘されていた。
 私自身は,2交替制勤務がよいのかどうかまだ結論を出せないでいる。しかし,夜勤体制がどうであろうと,「患者中心の看護」という視点だけは忘れてはならないと考えている。