医学界新聞

EBMの推進に向けて具体的な検討が始まる

第1回医療技術評価推進検討会開催


 さる6月2日,厚生省において第1回医療技術評価推進検討会が開催された。
 同省は,限られた医療資源を効率的に活用し,医療の質と患者サービスの向上を図るためにはEBM(Evidence Based Medicine;「根拠のある医療」)の実現が不可欠であり,そのための手段として医療技術評価は重要であるとの認識から,平成8年より「医療技術評価の在り方に関する検討会」を設置して検討を開始し,平成9年6月には報告書のとりまとめを行なっている。

EBMのための基盤整備

 同報告書によれば,医療技術評価とは,健康増進,疾病予防,検査,治療,リハビリテーションや長期療養の改善のための保健医療技術の普及と利用の意思決定を目的として,個々の医療技術を適用した場合の効果・影響について,健康結果を中心とした医学的側面や経済的,社会的側面から総合的に評価する活動のことを言う。
 その医療現場における利用については,臨床医に診療・治療方法の選択等を支援する情報を提供するとともに,患者や患者家族の診療計画に対する理解を深めるなどの効果が指摘されており,医療技術評価とはEBM実践の基盤ともなるものである。
 検討会の冒頭,挨拶に立った谷修一氏(厚生省健康政策局長)は,「昨年の報告書ではいわば総論をまとめたが,本検討会ではそれを踏まえ,医療現場で何をすべきなのかという各論・具体論の検討をお願いしたい」と検討会開催の趣旨を示した。
 座長として高久史麿氏(自治医大学長)を選出したのち,福井次矢氏(京大病院教授)がEBMについて解説し,「医療の質を高めるためにはEBMの普及が不可欠である」と強調。広井良典氏(千葉大助教授)も「EBMの新しさは臨床疫学的,統計的に見ていくことにある。疾病構造の変化に伴い,根本的治療が可能な感染症などは減少し,根治技術の未開発な生活習慣病などの慢性疾患が増大している現代においては,統計的手法はきわめて有効である」と指摘し,EBMの重要性を確認した。

診療ガイドラインの作成

 今回の検討会では,EBMおよびそれを支える診断・治療技術に関する医療技術評価の推進方策の検討に多くの時間を割いた。議題となった主な項目は以下の通りである。
(1)医療技術評価の結果に基づく診療ガイドラインの作成
 診療ガイドラインについては,当面,学会が中心となって作成する方向を検討。
(2)評価対象の選定と優先順位付け
 患者にも役立ててもらいたいという観点から疾患別に対象を設定する方向,また,ハイボリューム(高頻度)の疾患(例:高血圧や糖尿病)を優先する方向で検討。
(3)情報へのアクセス・活用法
 患者・医療者が必要な時に正しく情報を活用できるための体制を検討。
(4)EBMの普及と啓発
 いかに医療者一般や国民に「EBM」という言葉を浸透させるか検討。
 本検討会は本年度中に合計6回程度の会合を予定し,最終的に報告書を作成する予定である。