医学界新聞

第42回日本リウマチ学会開催


 さる5月7-9日,東京・有楽町の東京国際フォーラムにおいて,昨年他界された柏崎禎夫会長(東女医大膠原病リウマチ痛風センター名誉所長)のもとに開催された。

日本のリウマチ学発展に向けて

 柏崎氏が生前にビデオで収録した会長講演「21世紀に向けた我が国のリウマチ学」が,本間光夫氏(慶大名誉教授)を座長に行なわれた。氏は日本のリウマチ学の問題点として教育システムの不備と「疾患の定義,分類が不統一」な点を指摘。私見としながら,リウマチ性疾患を(1)運動器の炎症,(2)原因が病変部位に必ずしも一致しない,(3)原因不明と定義し,「リウマチ学のさらなる発展を望む」として講演を結んだ。
 講演後,柏木氏の遺志を汲む形で設立された「日本リウマチ財団・柏崎リウマチ教育賞」の第1回授賞式が行なわれ,受賞者には御巫清允氏(自治医大名誉教授)が決定した。

RAの滑膜増殖と関節破壊

 また同学会では,慢性関節リウマチ(RA)の主たる病変である関節滑膜の異常増殖とそれに伴う関節破壊に焦点を当てたシンポジウム「慢性関節リウマチの滑膜増殖と関節破壊」(司会=阪大 越智隆弘氏,東大 山本一彦氏)が開催された。
 まず最初に鈴木隆二氏(塩野義製薬)が,RA患者の病巣を形成する間質性細胞である滑膜/骨髄ナース細胞の特性と,T細胞,B細胞との相互作用について解説。続いて加藤智啓氏(聖マリアンナ医大難治センター)が,滑膜増殖と免疫応答との関連を明らかにする目的で,RA患者の病巣における関節浸潤T細胞の役割を多角的に検討した。
 さらに北島勲氏(鹿児島大)が,RA患者における骨形成系の研究から,滑膜における骨芽細胞のアポトーシスを阻止する治療法の可能性を示した。また佛淵孝夫氏(佐賀県立病院好生館)は,RAの骨関節破壊に破骨細胞が関与するが,bisphosphonateを使用した結果,骨関節破壊に対して有効なことを報告した。
 平成10年度のノバルティス・リウマチ賞を受賞した岡田保典氏(慶大)は,RA患者の滑膜における酵素の役割を検討。RA患者の滑膜炎から産生されるMMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)-2の活性にMT1-MMPが重要な役割を果たすことを明らかにし,「この活性化をブロックすることで治療につながる可能性がある」と述べた。
 最後に上阪等氏(東医歯大)が,滑膜細胞の増殖を停止させ,分化を促すことを目的に,サイクリン依存性キナーゼインヒビター(CDKI)遺伝子の1つであるp16を用いた遺伝子治療を概説。アデノウイルスをベクターとして使用し,アジュバント関節炎を惹起させたラットの膝関節の一方にLacZ遺伝子を,他方にp16を導入して治療効果を検討した結果,明らかにp16遺伝子を導入した膝関節の症状が軽減したことを報告し,今後のRA治療の新しい展開と遺伝子治療の意義を示唆した。