医学界新聞

NURSING LIBRARY 看護関連 書籍・雑誌紹介


在宅酸素療法者を支援する職員の必読書

在宅酸素療法 包括呼吸ケアをめざして 木村謙太郎,石原享介 編集

《書 評》川村佐和子(東医歯大教授・保健衛生学)

 近年,在宅酸素療法がさかんに行なわれるようになり,これに関する書物が重ねて出版されている。本書を,昨年4月に同じ医学書院から出版された木田厚端氏(単著)による『在宅酸素療法マニュアル』と比べると,木田氏の著作が活動の背景をなす理論的根拠を精力的に収集し,解説していることに比し,本書は後に示す目次によってもわかるように,きわめて実際的である。
 本書は,酸素療法を開始した療養者が医療機関内から退院し,外来通院しながら予防的な在宅生活を豊かにするサービスを受ける,そして病状の急性増悪により自宅で緊急事態に陥ったり入院したり,あるいは機器に支障が起こったり,地震などの災害に遭遇したりという危機管理まで含めて,すべての問題対応の実際を論じている。

著者自身の実践をもとに解説

 それぞれの課題を担当する著者は,それぞれの課題を実践している職員であり,職種も病院医師,病院看護婦,保健所保健婦,開業医師,医療ソーシャルワーカー,臨床工学技士と多い。内容は著者自身の実践をもとに,それらを他の機関や地域で応用できるように解説されている。酸素療法者がどこで生活していても,適切なサービスを保証しようとする,編者らの思いが伝わってくる。在宅酸素療法者を支援する職員は,読んでおくべき1冊である。
I.わが国における在宅酸素療法-歴史・現状と将来
II.慢性呼吸不全患者の肺生理学的特性
III.慢性呼吸不全患者の酸素療法の実際
IV.慢性呼吸不全患者の急性増悪
V.慢性呼吸不全患者の人工呼吸管理
VI.呼吸器疾患患者に対する理学療法
VII.在宅酸素療法のケア
A)病院医師の立場から
B)病院看護婦の立場から(患者指導マニュアルを中心に)
VIII.地域社会での在宅酸素療法
A)保健婦の立場から(保健所保健活動としての取り組み)
B)開業医師の立場から
IX.社会福祉資源の活用
X.在宅医療支援に向けた人材養成
A)医師教育
B)看護教育
C)呼吸療法専門スタッフ養成と在宅医療セーフティワーク
XI.酸素供給機器と周辺機器
B5・頁168 定価(本体4,200円+税) 医学書院


具体例から学ぶ入院時からの退院計画

ナーシング・ケースマネジメント 退院計画とクリティカルパス
森山美知子,済生会山口総合病院看護部 著

《書 評》嶋森好子(済生会向島病院)

 日本の財政状況は逼迫している。医療経済も底をつきかけており,世界に類をみない国民皆保険制度も危うくなってきた。これらを堅持するために,新たに医療費の利用者負担が求められるようになり,その結果,病院では外来患者数の減少傾向がみられている。
 特に,諸外国と比べて長い入院日数や,社会的入院などの是正を迫る声は大きく,より適正な医療が求められるようになってきた。
 少子・高齢社会に向けて,介護保険法が国会を通過し,保険・医療・福祉制度の新たな枠組みが作られようとする中で,病院の役割や医療提供の仕組みを見直す必要が出てきた。また,医療費の適正な配分を求める立場から,これまでの出来高払い制から,急性期医療においても包括支払制度を導入しようとする動きもある。
 このような医療状況の変化の中で,病院における看護も大きく変化を迫られている。

退院調整専門看護婦の役割を指摘

 本書は,森山氏と済生会山口総合病院の看護部とが協働して行なった看護実践を整理したものである。そのタイトルにナーシング・ケースマネジメントと冠したように,退院計画がナーシング・ケースマネジメントであることを,患者の入院から退院,在宅に至るまでの具体的なケアの事例の中で納得させられる。
 著者らも本書の中で述べているが,多くの臨床にいる看護婦は(特に最近多くなってきた継続固定チームナーシングやプライマリーナーシングにおける受け持ち看護婦は),入院から退院,およびその後の在宅ケアに至るまで十分考えた看護計画を立てていると自負している。そのような看護婦にとって,果たして退院調整という役割の看護婦が必要かと考えるだろう。経過をよく知らない看護婦が病棟にやって来て,果たしてうまく退院に結びつけることができるのだろうかという疑問である。しかし,このようなシステムは10数年前に訪れたアメリカ ワシントンD.C.の病院ではすでに導入され,週1回病棟を訪れるディスチャージ・プランナー(退院計画看護婦)と病院責任者によって,全患者の退院に関するカンファレンスが行なわれていた。
 これまで,日本ではなぜこのような立場の看護婦等が必要とされなかったのだろうか。その要因の1つは,長い在院日数だと考えられる。この長期入院のシステムが,患者家族への問題解決の時間を与え,あきらめの時間を与えていたのだろう。その家族の納得の時間に沿って退院計画がゆっくりと立てられていたのである。

現状を見直すために適切な書

 しかし,先にも述べたように,すでに診療報酬では在院日数の制限が行なわれるようになり,患者からも日帰り手術や短期入院を望む声も大きくなってきた。しかし一方で,患者の家族関係も変わり,退院に向けての援助の複雑さは増してきている。
 本書は,このような現状を踏まえ,改めて退院計画の意味を説くとともに,その具体的な進め方を示している。私自身,本書を読みながら当院での今後の看護ケアの進め方についてのいくつかの示唆が与えられた。
 入院時から退院計画を行なうことが,入院中のナーシング・ケースマネジメントにつながるという認識を新たにして,現状を見直すのに適切な書であり,臨床の方に是非一読いただきたいと考える。
A5・頁192 定価(本体2,200円+税) 医学書院


第一線で働くナースの日常にこの1冊

看護に役立つ病気の事典
L.ラングフォード,J. M. トンプソン 著/飯田喜俊 監訳

《書 評》日野原重明(聖路加看護大学名誉学長)

 今般,医学書院MYWから,Mosby-Year Book社発行の『Handbook of Diseases』の翻訳が出版された。著書はアメリカの2人の専門ナースのL.ラングフォード,J.M.トンプソン博士である。これが飯田喜俊先生の監訳で刊行された。

一目で病気の全貌を理解

 頁をめくると目次には「あいうえお」順に病名が総計447あげられ,何の病気でも,索引を引きさえすればすぐ本文が出る。そしてそれぞれの病気について,その病因と頻度,病態生理,症状,合併症,診断,全身管理の項目別に要領よく書かれてある。長さは2頁,長くても4頁でその病気の全貌が一目で理解できる。
 何のためにこの本が書かれたか。それはナースが患者や家族から,また救急部の医師や検査室の技師から,栄養士から,その他さまざまの人から,電話やファックスで,それはどういう病気かの問い合わせがあったり,医師からこれこれの患者が救急入院するから入院オーダーを受けてほしい,などの問い合わせを受けた時,その病名はいつか聞いたことがあると思っても,すぐには思い出せない。しかし,問い合わせの電話は来ている。ナースとして入院オーダーはすぐ受けなければならないという時,この本1冊をポケットに入れておけば,ナースとしていつも臨機応変に対応できる。
 こんな便利な虎の巻があれば,図書館に飛んで行って大急ぎで調べる必要もない。いちいちこれ何の病気などと研修医に聞く必要もない。そういったナースのために便利な本である。さすがに現実主義の米国人ナースが考えた本だなと感じる。第一線でさまざまな問い合わせや注文を受けなければならないナースの日常にこの本は貢献するところが大きい。
 21世紀のナースは医師に近い病気の大要を頭に入れて,医師その他の医療従事者と協力して働かなければならない。この本にはプライマリ・ケア医学以上の広い医学的知識が入っている。ぜひナースの皆さんにこの本をお勧めしたい。
A5変・頁488 定価(本体3,900円+税) 医学書院MYW