医学界新聞

聖ルカ・ライフサイエンス研究所

訪問看護婦,臨床専門看護師のためのセミナー開催


 聖ルカ・ライフサイエンス研究所(日野原重明理事長)では,同研究所の事業の1つである「医師・看護婦(士)養成に関する研修コースプログラム作成のためのセミナー」(第3回)として,さる4月11日に,「訪問看護婦,臨床専門看護師の臨床能力(主としてフィジカルアセスメント)向上のための研究セミナー:専門家による講演とデモンストレーション」を,聖路加看護大学講堂において開催した。

激変するアメリカ医療

 セミナーでは,最初に日野原理事長が「目まぐるしく変わっていくアメリカの医療,看護体制の実状」を特別講演。昨年末に氏が訪問したアメリカの病院の現状から,変革を余儀なくされているアメリカ医療の実状を報告。大学と病院間の合併や統合が進み,看護職員の大型削減が続いていること,そこから発する医療・看護における質の低下,患者のQOLの低下を懸念するとともに,多忙となる看護の現状から看護体制の変革が求められること,医療の変革は医学教育,看護学教育の変化をもたらしていることなど,今までにない医療の変革はいずれ日本にも訪れることを予測する発言を行なった。なお,本紙2288号(5月11日付)より日野原氏による「激変するアメリカ合衆国医療事情」を短期集中連載している。

高齢者のフィジカルアセスメント

 続いて行なわれたセミナー「高齢者の疾患,症状への対応のためのデータベース」では,7名の演者による講演が行なわれた。
 その中で地域看護専門師である馬庭恭子氏(広島YMCA訪問看護ステーション・ピース所長)は,在宅におけるフィジカルアセスメントの特徴として,「患者(利用者)の合意,プライバシーの保護」をあげ,患者の生活を視野に入れ,全体像を捉えることの必要性を指摘した。
 また医師の立場からは,まず神吉和男氏(聖路加国際病院・眼科)が,眼の構造と機能,高齢者における視力障害の主たる眼疾患を解説。緑内障は早期発見早期治療で完治できることを述べるとともに,訪問看護では眼底検査を看護婦がすべく「眼底検査の方法をマスターしよう」と強調した。
 江崎史朗氏(同・耳鼻科)は,「高齢者の聴力障害は,単に難聴のみを示唆するものではなく,言葉の理解度など知能の衰退をも含めた障害」と述べ,「話し手が言葉をゆっくり,正確に,はっきりと短い文章で対話することが最も重要」と指摘した。
 衛藤光氏(同・皮膚科)は,高齢者の皮膚科的訴えと取り上げ方を講演。そのチェックポイントとして,(1)全身の皮膚観察,(2)毛髪,爪の観察,(3)口腔,舌の観察をあげた。また,高齢者の代表的訴えとして,皮膚の痒みと発疹を指摘。「アカも身の内」と,水分,脂質を保持するスキンケアの重要性を説く一方,陰部のただれは皮膚癌の疑いもあるため,要注意であると述べた。