医学界新聞

第25回日本集中治療医学会総会開催

パネル「認定看護師の役割と展望」


 第25回日本集中治療医学会総会(会長=自治医大教授 窪田達也氏)が,さる3月5-7日,東京国際フォーラムで行なわれたが(第2284号既報)看護部門および医師・看護部門合同の企画も多数もたれ,会場にはたくさんの看護婦が足を運んだ。本号ではその中から,第1日目に行なわれた看護部門のパネルディスカッション「認定看護師の役割と展望」(座長=慈恵医大教授 深谷智恵子氏)からいくつかの話題を報告する。


 認定看護師制度は1995年に日本看護協会により創設され,まず「創傷・オストミー・失禁看護」と「救急看護」が認定看護分野として特定された。1996年10月よりこの2分野の認定看護師教育を看護教育・研究センターで開始し,現在までに救急看護認定看護師23名,創傷・オストミー・失禁看護認定看護師36名が誕生している。
 パネリストとして「認定看護師制度と教育課程」を口演した岡谷恵子氏(日看協看護教育・研究センター)は認定看護師制度の目的を,「特定の看護分野において,熟練した看護技術と知識を用いて,水準の高い看護実践のできる認定看護師を社会に送り出すことにより,看護ケアの質の向上を図る」ことと述べ,その役割は「(1)質の高い看護実践を行なうこと,(2)看護実践を通して他の看護者に対して指導を行なうこと,(3)他の看護者の実践を支援するために看護者に対してコンサルテーションを行なうことである」と制度趣旨を示した。

新たに4つの認定看護分野が誕生

 岡谷氏は認定看護分野として特定される際の条件として「(1)他の分野とは違う特別な看護技術を明確に有している,(2)国民のヘルスケアニーズがある,(3)医療・保健・福祉の大きな変化の中で緊急に対応すべき必然性を有している」の3点を指摘し,これらの条件の下,既に養成を開始している前述の2分野に加え,認定看護師の新しい分野として,「重症集中ケア」「がん性疼痛看護(ペインコントロール)」「がん化学療法の看護」「ホスピスケア」が特定され,「感染管理看護」については検討中であること,また,「重症集中ケア」「ホスピスケア」については今秋より教育が開始されることを報告した。
 認定看護師の教育制度については「総時間数が600時間で教育期間は最低6か月間。教育内容は共通科目,専門基礎科目,専門科目,実習の4つの柱で構成される。認定看護師制度においては,教育水準を一定に保持するために,教育課程・教育機関も審査・認定することとなっている」と解説した。教育が6か月以上の長期にわたることについては,これまでに認定看護師の教育を受けた看護婦の多くは病院からの派遣であったという例を示し,「医療機関からの認定看護師制度に対する理解」に自信をのぞかせた。

期待される経済効率への貢献

 一方,中村恵子氏(杏林大付属病院)は認定看護師を受け入れる管理者の立場から発言。「認定看護師の研修受講には看護経験5年,その分野に3年以上の経験が必須条件であるが,管理者の立場からすれば,5年以上の経験者を6か月以上の研修に出すのは容易なことではない」と看護管理現場の率直な胸のうちを表明した。
 その上で,認定看護師となった看護婦は「質の高い看護実践,指導,コンサルテーションだけではなく,経済効率を考えた上で看護の質を向上させる役割を果たすべきである」と述べ,具体的には「認定看護師がいることによって,質の確保と同時に在院日数の短縮に効果がある」という成果を示していくことの重要性を示した。
 中村氏は「成果が表に出てくれば,管理者は経済効率を考え,認定看護師の育成・採用に意欲を持つはず」と管理者の立場から檄を飛ばした。
 ほぼ満席となった会場からは,認定看護師の教育の中身,評価方法,業務の内容等について質問,意見があいつぎ,参加者の関心の高さをうかがわせた。参加者にとっては認定看護師制度の現実を知るよい機会となったようである。