医学界新聞

第1回アロマセラピー学会総会開催

医療におけるアロマセラピーの可能性を論議


 さる2月22日,第1回日本アロマセラピー学会総会が,横山三男会長(久留米大名誉教授)のもと,豊中市の千里ライフサイエンスセンターで開催された。参加者は,医師や看護婦をはじめ,助産婦,薬剤師,鍼灸師,アロマセラピストなどさまざまな分野の専門家約500名。学会では,特別招待講演や21題の一般演題発表の他,ランチョンセミナー「エッセンシャルオイル内服における臨床報告」(ノザキクリニック院長 野崎豊氏)が行なわれた。

アロマセラピーとは

 アロマセラピーは,芳香治療とも称されるが,蒸留法や圧搾法などで抽出したハーブ(香草)の非水溶性の成分を集めたエッセンシャルオイルを治療に用いる療法のことで,使用方法には以下の4種類がある。(1)エッセンシャルオイルの揮発性の高さを利用して空気中に蒸発したものを吸入する,(2)エッセンシャルオイルを植物オイルで薄めてマッサージに用いる,(3)香りによって視床下部を刺激する,(4)内服する。
 アロマセラピーは症状の緩和が目的であって,疾病を治すことはできない。あくまで代替療法であり,疾病の治癒には医師の治療や食事療法などが不可欠である。しかし,医師との連携プレーによる有効活用で,症状の緩和から始まり,最終的には疾病の治癒の一助になると期待されている。
 昨(1997)年11月に,アロマセラピーを安全で効果的な医療の補助療法として推進しようと,日本アロマセラピー学会が発足した。なお学会では,アロマセラピーを科学的に効果が実証できるものとして,医療の分野で発展させることをめざしている。
 日本では,当初アロマセラピーが一般女性誌などでファッショナブルに取り扱われ,また雑貨店などで容易に手に入れられることから,医療の分野とはほど遠いイメージが与えられた。そのためもあってか,さまざまな事故も起きている。しかし,フランスやベルギーでは医療として認められており,医療効果も実証されている領域である。

多方面からなる学会発表

 今学会で発表された演題は21例。この中で,イギリスでは老人ホームや産婦人科で使用されたり,エイズ患者,自閉症患者の精神安定に利用されている。また,ごく一部ではあるが医療分野にアロマセラピストが活躍していることが紹介された。
 一方ドイツでは,アロマセラピーの事故責任を医師や薬剤師に科し,使用目的によっては薬剤師の処方を必要としている。さらに,代替療法として認めることで,薬剤の使用量を減らすなど,結果的に医療費の高騰の抑制につながっていることが紹介された。
 実際に臨床で使用した事例としては,芳香浴によって入院患者の睡眠を促進し,ナースコールの回数が減少したとの発表の他,生活習慣を改善できない高血圧患者にエッセンシャルオイルでマッサージを施行することで,ストレスと倦怠感を緩和し,血圧値の降下に役立った事例,また妊娠・出産時にもアロマセラピーが効果を示したという発表もあった。
 その他にも,脳波や皮膚表面温度,波動を測定した結果効果を示した例や,アロマセラピーのストレスに対する有用性など,多彩な発表が行なわれた。

代替医学・医療とアロマセラピー

 特別招待講演は,「代替医学・医療について」と題して鈴木信孝氏(金沢大)が行なった。鈴木氏は日本代替医療学会の副理事長職に就いている。なお,講演要旨を以下に記す。
 代替医療は,科学的な検証も臨床応用もまだなされていないために,医学教育における講座もなく,大学病院などでは実践されていない医学分野だが,アロマセラピーもその代替医療の範疇に含まれる。薬品の副作用や経済的問題,近年言われるところの医療不信などにより,代替医療を求める患者は増えつつある。今後,西洋医学にうまく取り入れて実施することが必要になるであろう。
 なお,第2回総会は2日間の日程で,明年東京で開催される予定。同学会への問合せは下記まで。

・日本アロマセラピー学会事務局
(大阪)TEL&FAX(06)369-6800
(東京)TEL&FAX(03)3771-3122