医学界新聞

第6回全国准看護婦・准看護士看護研究会開催

准看護制度を廃止し,看護婦への移行を

早川市子 (太田協立病院)


 さる1月31日-2月1日の両日,名古屋市のウイルあいち(あいち女性総合センター)において,「第6回全国准看護婦・准看護士看護研究会」(会長=名大病院 中島幸江氏)が開催された。
 厚生省が1996年12月に准看護婦問題調査検討会報告書を発表し,「看護婦養成制度の統合」を提言した。しかしそれにもかかわらず,日本医師会は准看護婦制度の維持存続を主張し,「地域医療を支えるかかりつけ医を補助する看護職」として准看護婦の業務や就業施設を制限する案を発表した。また日本看護協会は「准看護婦移行教育検討プロジェクト」にて,実務経験5年以下2100時間,6年以上930時間の移行教育プログラム案を発表している。
 同研究会には,「准看護婦である自分たちの身分はどうなるのか」,「今まで通りに仕事が続けられるのか」,「看護婦への移行はできるのだろうか」など,不安を抱えた准看護婦が全国から300余名が参集した。また,会員以外の参加者が多く,休憩時間には入会申し込み者が殺到していた。
 研究会冒頭には瀧真知子事務局長が基調報告。瀧氏は,「医療福祉教育の分野での合理化と経費節減が進められている。命と健康を守ろうとしている私たち准看護婦もこれらの動きを認めるわけにはいかない」と強調。看護制度の動きについては,「日本医師会が准看護婦存続論を打ち出す中で,1997年4月から准看護婦養成所,看護婦養成所等の学生に医療機関勤務を義務づけることを禁止するための省令が施行されたことは,准看護婦学生を守る画期的なできごと」などと述べた。

看護制度の一本化を早期に

 パネルディスカッション「准看護婦制度廃止後の准看護婦 パート III」ではパネラーを中心に活発な討論が交わされた。
 まず最初に加藤友康氏(愛知県保険医協会)は,「准看護婦制度の中で最も苦しんできた准看護婦が,自らの意志で立ち上がってきたことは喜ばしい。この問題は低医療費政策のもとに,国の公的責任と援助を怠り,私的機関にまかせて,頬かぶりしてきた厚生省をはじめとする国側に大きな責任がある。一番悲しんでいるのは貧弱な医療の提供しか受けられない患者という国民である」と政府の姿勢を厳しく批判した。
 原山恵子氏(弁護士)は,「弁護士として不合理な差別は許せない。看護婦自身が自分の仕事に自信と誇りを持ち,輝き,そして生き生きとしてこそ国民も安心して医療が受けられるのもの」と述べた。
 また,清川美和氏(春日井准看護婦学校副校長)は,「看護制度そのものが持つ矛盾を解消するために,准看護婦が現場で得た知識を理論づけ,差別感を取るために移行教育がなされるべき」と移行教育内容の提言を行なった。
 准看護婦を代表して石井信子氏(汐田総合病院)が,「2001年を待つまでもなく,1日も早い看護教育の統合と准看護婦全員への移行教育を!」と訴えた。
 フロアからは一般参加の佐藤貴美子氏(作家)が,「私自身の入院や夫を看取った経験からして,看護をする者に差別はいらない。心豊かな看護婦が豊かな看護を提供できるのであり,言葉かけだけでも人は癒されることがある」と発言。その他,「早期に看護制度の一本化を」と願う発言が相次いだ。

准看護婦問題調査の意義

 研究会ではその他に,3分科会に別れた看護事例検討会や,似田貝香門氏(東大大学院教授)による基礎講座が企画された。
 准看護婦問題調査検討会調査小委員会委員長を務めた似田貝氏は講義の中で,准看護婦問題調査が准看護婦問題検討会の中で果たした役割や,信頼性および妥当性を有するための努力等について語られた。また,私たちはこの講座の中で,この調査が准看護婦問題に関しての国による初めてのものであったこと,対象者の偏りを避けることが調査の妥当性の最初のハードルであったこと,調査表は配票せず留置方法を認めず,必ず調査員の立ち合いのもとで行なわれたことなど,大変大がかりな歴史的調査であったことを学んだ。
 似田貝氏はこの調査結果から,「看護とは何かについて否応なく考えさせられた。看護・介護については専門性が十分認められていない。日本看護協会はその専門性を確保する理論構築と戦略が不可欠であろう。また診療機関の医師ほど他の専門職の専門性を認めないという傾向がみられるが,高齢化社会における地域の臨床・医療の対応が今後の重要な課題にもかかわらず,きわめて消極的である」と述べ,在宅療養を希望する多くの国民の期待に応える積極的な医療・看護活動ができないことを危惧した。

研究会としての見解を発表

 一方本研究会では,「看護制度の一本化」を主とする要望書をまとめ小泉厚生大臣に出すことを決定するとともに,准看護制度の廃止を前面に出した集会宣言を行なった。「日本看護協会准看護婦移行教育検討プロジェクト報告書」についての本会の見解として,(1)准看護婦制度を1日も早く廃止すること,(2)すべての准看護婦・士を国の責任で看護婦・士に切り替えること,(3)移行教育は,経験を加味し働きながら学べる体制と1人ひとりが自ら選択できるよう多様で幅広いものであること,(4)移行教育終了後の再就職の道が保証される施策が取られること,(5)看護婦・士の養成は高卒3年以上で一本化することを提示,以上を日本看護協会に要望した。
 さらに「日本医師会看護制度問題検討会報告書」については,准看護婦制度を改革と称して存続させるこの提案に反対と明言。「提言は新たな職種の創設をめざすものであり,准看護婦の業務,就業施設の制限をして“かかりつけ医”を補助する看護職と位置づけているが,地域医療の質を自らこの程度でよいとし,現に准看護婦が果たしている役割も正当に評価していない。ましてや,“日本の風土にあった准看護婦制度”と述べていることは,徒弟制度やお礼奉公の発想から生まれたもので民主主義に反する時代遅れのものである」との見解を発表した。

准看護婦としての思い

 筆者は准看護婦であり長年外来勤務をしている。准看護婦養成所を卒業したころに,「この程度の知識ではとても仕事を続けられない」とこわい思いをしながら夜勤をしたのを思い出す。途中転職もしたが,結局続けられる仕事としてまた看護職を選んだ。はじめのころは,知識不足からとても「看護」とはいえない診療の介助をしていたように思う。しかし,よい先輩と「患者さんにとって何が必要か」を追求する職場の中で,徐々に外来看護ができるようになったと感じている。今でも業務の多くは診療の介助であるが,それは医師の補助ではなく,患者さんのための待ち時間の配慮であったり,次に来院するまでの療養指導であったりする。
 私は,看護技術や成人看護学についてきちんとした知識を身につけていれば,経験の浅い時期でも一定レベルの外来看護ができたのではないかと,私自身が行なってきた仕事について悔やむ。一刻も早く現行の准看護婦養成制度を廃止し,准看護婦全員が看護婦へ移行できるよう,国の責任での移行教育を切願している。