医学界新聞

看護診断の今後を考える

第20回日本POS医療学会開催


 第20回日本POS医療学会が,福間誠之会長(明石市立市民病院長)のもと,さる2月28日-3月1日の両日,明石市の市立市民会館を主会場に開催された(2282号で既報)。今回は「POSで良い医療」をメインテーマに,日野原重明氏(聖路加国際病院理事長)による会頭講演をはじめ,6題のワークショップ,パネルディスカッションなどが行なわれた。
 本号では2月28日に行なわれたパネルディスカッション「医学診断と看護診断」(座長=浜松医大 植村研一氏,東海大 藤村龍子氏)の模様を紹介する。

医学診断の概念

 最初に橋本信也氏(慈恵医大)が医師の立場から発言,「医学診断という言葉は看護診断という言葉の登場によって,これと対比する必要のために作られた」とした上で医学診断について解説を行なった。
 その中で橋本氏は「医学診断も看護診断と同様,情報収集,問題の明確化,問題解決のための計画立案という,POSの方法論に基づいて行なわれている。また治療の経過を追うなかでも,綿密なアセスメントを行ない,新たな問題点の抽出,解決のための計画の立案というプロセスを繰り返している」と説明した。橋本氏は最後に「医療に携わる他のスタッフと協同することによってはじめて患者を癒すことが可能になる」と述べ,講演を締めくくった。

看護診断の概念と実践

 続いて登壇した中木高夫氏(名大)は,看護診断の成り立ちとこれからの展望について語った。中木氏は「看護診断は要素還元論的な近代合理主義の流れをくんでいるが,アメリカでは最近これに対し全包括論的なポストモダンの方向性を模索する動きがある」と語り,「今後,看護診断はこうした立場からの研究を吸収し,実践につなげる必要性が出てくる」と,今後の看護診断が向かう方向性を示唆した。
 最後に松浦正子氏(神戸大附属病院)が,看護診断の臨床における活用について報告。「看護診断の導入以降,看護職の独自性,専門性が明確化され,それに伴い医師と看護職の信頼関係が促進された」と語った。また,松浦氏は「医師と看護職は患者の健康問題の解決という共通の目的のために,お互いの役割,機能を尊重しあいながらコラボレイティブに活動していけると思う」と述べ,医師をはじめとする他の医療従事者との協力の重要性を強調した。