医学界新聞

第18回日本臨床薬理学会より

新薬の薬効評価はどうあるべきか


 昨年12月11-12日の両日,東京のシェーンバッハ・サボーにて早川弘一会長(日医大教授)のもと第18回日本臨床薬理学会が開催された。2日目に行なわれたパネルディスカッション「新薬の薬効評価はどうあるべきか」(座長=昭和大 春見建一氏)では,会場に入りきらないほど多くの聴衆が,臨床試験をめぐる議論に耳を傾けた。本号ではその議論の一部を紹介する。
 厚生省医薬安全局審査管理課の森和彦氏は「新医薬品の承認審査担当官の立場から」と題して発言。現在の薬効評価の問題点として(1)基礎となるデータの質,(2)臨床試験でのエンドポイントの選択の2点を示し,(1)については,日本の治験(臨床試験)データの質の悪さは,データ生産の場でのクオリティコントロールができていないという構造的な問題に起因すると指摘し,(2)については,治療目標の達成度合いとの関係がもっと議論されるべきであると述べた。
 今後の方向性としては,(1)ICH(International Conference on Harmonisation)-GCP(Good Clinical Practice)に基づく新GCP(昨年4月より一部施行,本年4月より完全施行)の普及定着の促進,(2)患者指向,治療目的指向の評価方法の検討・開発,(3)臨床分野ごとの薬効評価ガイドラインの作成・改訂の3点の必要性を強調した。
 一方,黒川清氏(東海大)は,ICH-GCPの導入に伴い,今後予想される「治験の空洞化」や海外での治験に対する「ただ乗り」批判を指摘しつつ,「さまざまな立場の人が治験がやりにくいと考えている。なぜうまくいかないのか」と問題提起。企業のあり方・雇用,医学教育・医学部のシステム,IRB(薬物治験審査委員会)のあり方,医師患者関係,自らの運命を決断できない日本的感性等につき幅広く問題点を指摘。
 GCPには,多くの立場の人にとり,インセンティヴが働かない環境があることを示し,「インセンティヴなくてはシステムはうまく機能しない。消費者主義の広まり,規制緩和,自立性の確立などが必要であり,日本的システムの中ででいくらグローバルと言ってもうまくいかない。イノベーティングな発想で変えていかねばならない」と指摘した。