医学界新聞

 Nurse's Essay

 心配性のお道具好き

 宮子あずさ


 20代の前半,私はオートバイで走り回るのが好きで,とにかく年がら年中,路上をうごめいて生活していました。
 寝ずに大阪から阿蘇まで走り続けて,オイル交換に入ったオートバイ屋で倒れたり,下着の替えが尽きて,シートに下着をくくりつけて乾燥させながら国道を走ったり,まさに,全国各地に恥と迷惑をまき散らした不届き者だったと言えましょう。
 そしてさらにかっこ悪いことには,しでかすことが生命知らずの割に,私はものすごい小心者。換えのレバー類や修理マニュアルは,ともかく持っていないと気がすまないために,自分では使いこなせない工具類まで積み込み,どこに行くにも山のような荷物を積んで走り回っていたのです。それこそ,阿蘇に行く時も,ちょっとそこまで行く時も……。 思えばこれは昔からの性格でした。高校時代,生徒会の会計をしていた時には2つ穴パンチまで持ち歩き,“歩く事務室”とまで言われたこともあったんですよね。
 そして,今や家族全員がビョーキになり,私の家にはさまざまな医療グッズが集まってきています。マイ水銀血圧計,マイ血糖測定器はもちろんのこと,ごくごく最近ではマイ酸素飽和度測定器まで手元にやってきて,本当にハッピー。これらをすべて積んで,最近手に入れた若葉マークつきのマイ・ミニクーパーで親の家を回る時,私は妙に満ち足りてしまうのです。それらの値を見て倒れそうになることはあるにしても,です。
 結局のところ,自分の抱えている不安を,とにかく道具をかき集めることで安心したいというのが,私の対処行動なんですね。最近,そのことがはっきりわかってきました。
 いろいろお道具を買い集める時,私はきっと不安なのです。だから,何を買い集めているかで,自分が気づかなかった不安がわかる  そんな逆のことも言えるのではないでしょうか。
 心電図の読み方マニュアル/看護診断の解説書/各種看護理論の本/精神科看護関係のテキスト……。
 気づかぬうちに,こんな本をいっぱい買ってしまった私は,自分が看護婦としてちゃんと働いているのか,実は,ものすごく不安なのかも知れません。
 でもこんな自分をおもしろがりながら,ぼちぼちやっていこうと思っています。