医学界新聞

第25回日本救急医学会開催

救急医療における早期リハビリテーションの有効性を論議


 昨年11月26-28日の3日間,第25回日本救急医学会が,島崎修次会長(杏林大教授)のもと,東京・新宿区の京王プラザホテルおよび東京都庁を会場に開催された。なお,医師部会では「机上災害シミュレーション:病院火災発生」などが行なわれた(2273号で一部既報)。
 看護部会では,教育講演として(1)救急看護におけるフィジカルアセスメントの基本(筑波大助教授 笹鹿美帆子氏),(2)看護の質のアウトカム評価(亀田総合病院看護部長 竹股喜代子氏)など4題の他,シンポジウム「救急医療における早期リハビリテーションの有効性」,パネルディスカッション「救急看護認定看護師が活躍できる環境をいかに整えるか」,フリートーキング「災害と看護」,フォーラムセッション2題などが行なわれた。
 また,一般演題では初療看護や看護管理,家族援助,感染管理など89題が口演,ポスターにより発表され,幅広い診療領域を視野に入れた救急看護を取り巻く最新の話題が提供されるとともに,参加者は議論に参加し最新の知見の共有が図られた。

早期リハビリテーションの メリットとデメリットを論議

 葛西猛氏(亀田総合病院),高田貴美子氏(札幌医大病院)の司会によるシンポジウムでは,5人の演者が登壇し,救急医療での早期リハビリテーションの有効性について論議した。
 宮下多美子氏(聖マリアンナ医大横浜市西部病院救命救急センター)は,意識障害等の不穏な患者の抜去対策として,上肢関節の可動域が妨げられないプラスチックボトルを利用した代用抑制帯を考案。患者の活動と感染のリスクを低下させ,生活機能の維持が図られたことを発表した。
 高山成子氏(前福井県立看護短大)は,廃用症候群の予防の観点から,救急医療において患者の自立を見据えた早期リハビリテーションを実践できるのは看護職であると強調。また森川亘氏(帝京大)は,救命救急センターでの理学療法は呼吸理学療法が半数を占める実態を報告するとともに,実例を示しながら早期離床をめざした救急医療における理学療法について解説した。
 宮川哲夫氏(昭和大医療短大)は,「まだ科学的に解明されていない部分がある」としながらも,救急医療における呼吸理学療法の有効性を検討。その後のディスカッションでも嚥下機能との関係など,呼吸(肺)理学療法は話題となった。
 最後に土肥信之氏(広島県立保健福祉短大)は,リハビリテーション専門医の立場から発言。廃用症候群の最新知見を解説するとともに,「救急現場での悲観的な機能予後予測は,患者や家族から回復の芽を摘み取ってしまう。救急におけるリハビリテーションはナーシングケア」と述べた。
 本シンポジウムでは,「動かしてはいけないケア」から「早期リハビリテーション」へと変化している現状が述べられるとともに,そのメリット,デメリットについても論議された。救命救急領域におけるリハビリテーションの役割については今後さらなる議論が行なわれることを予感させた。