医学界新聞

第3回白壁賞と第22回村上記念『胃と腸』賞決定


  

 「第3回白壁賞」および「第22回村上記念『胃と腸』賞」の贈呈式が,第39回日本消化器病学会大会(参照)前日の10月28日,福岡市のホテルニューオータニ博多において開催された。前者の受賞論文は西俣嘉人氏(南風病院・消化器病センター)らによる「Crohn病診断のための主要所見と副所見:縦走潰瘍―X線診断の立場から」(雑誌『胃と腸』〔医学書院発行〕第31巻4号掲載),また後者の受賞論文は末兼浩史氏(川崎医大・消化器内科)らによる「非腫瘍性胃RLHと胃MALTリンパ腫の経過観察例の検討:Helicobacter pyloriとの関連を中心に」(『胃と腸』第31巻8号掲載)。

「Crohn病診断のための主要所見と副所見:縦走潰瘍-X線診断の立場から」

 「白壁賞」は,故白壁彦夫氏の偉業を讃えるために創設された賞で,氏の業績に鑑みてその選定基準を「消化管の形態・診断学の進歩に寄与した優れた研究を対象とし,『胃と腸』誌のみでなく,関連雑誌に掲載された論文でも『胃と腸』編集委員の推薦があれば対象とする」としている。
 贈呈式では,『胃と腸』編集委員を代表して八尾恒良氏(福岡大筑紫病院・第39回日本消化器病学会長)が賞状と賞牌を授与。続いて,中村秀穂医学書院常務取締役から副賞の賞金が贈られた。
 受賞者を代表して挨拶に立った西俣氏は,「昭和46年,当時順天堂大学にいらした白壁先生より,癌研病院の主任研究員をなされていた中村恭一先生(現東医歯大教授)の下で勉強させていただく機会を与えられ,2年あまり消化管病理のみならず中村先生の考え方などを学べる幸運に恵まれた。その後,昭和60年から白壁,中村両先生を中心として,当時の『潰瘍性大腸炎研究会』,現在の『白壁フォーラム』というクローズドのIBD研究会が始まり,私たちもその一員として参加させていただいた。その会では,当時話題になりはじめたCrohn病,潰瘍性大腸炎,腸結核を主に,X線・内視鏡・病理を1例ずつ時間をかけて厳しい討論を続けてきた。私たちのグループの創設者であり,またリーダーであった故政信太郎先生が,約30年前に白壁先生のご指導のもとで胃の多発性潰瘍による変形と言われるものをテーマとして研究を始めて以来,消化管の変形学というものが,私たちのグループの大きなテーマの1つとして現在まで続いている。また,かねてから白壁,中村両先生より“部位の同定・点と点との対応”ということを絶えず言われてきたが,癌研病理時代に学んだ切除標本の全割切片作製の手法と,以前から行なっていた摘出標本および固定標本レントゲノグラムを組み合わせることによって,変形とそれに対応する病理所見をほぼ解決したと思っている。現在消化管の形態診断はX線診断より内視鏡診断が主流になっているが,この時流の中で地味な変形学の研究が白壁賞の受賞によって評価されたことを大変光栄に思う」と謝辞を述べた。

「非腫瘍性胃RLHと胃MALTリンパ腫の経過観察例の検討:Helicobacter pyloriとの関連を中心に」

 引き続き会場では,「第22回村上記念『胃と腸』賞」の贈呈式が行なわれた。
 「村上記念『胃と腸』賞」は,『胃と腸』創刊時の「早期胃癌研究会」の代表者村上忠重氏を顕彰して創設された賞で,『胃と腸』誌の年間最優秀論文に対して与えられる。
 受賞者を代表して末兼氏は,「候補になっただけでも満足であるのに,名誉ある賞を頂戴して恐縮している。今回受賞対象となったH.p とMALTリンパ腫について,長期経過例を検討した結果,慢性胃炎RLH(反応性リンパ網内系過形成)の延長上にMALTリンパ腫があり,MALTリンパ腫の腫瘍性の進行とH.p は逆相関,つまり浅いものはH.p の関連が強く,深く潜った低悪性度MALTリンパ腫にはH.p が減少してほとんどないという事実を掴んだ。纏めた本人が力不足で,検討内容など反省点が多いが,今後も今回の受賞に恥じないよう努力を続ける必要性とともに,この賞の重みを痛感している」と感想を述べた。