医学界新聞

 Nurse's Essay

 2交替勤務怖い夜

 久保成子


 世の中が,おもちゃ箱をひっくり返したような様相を保ったまま,1997年が暮れようとしています。ジョアン・ミロの「アルルカンの謝肉祭」などの絵画のようだと表現したら,ミロに失礼でしょうか。
 病院勤務の医師がため息混じりに洩らします。医療に関係する制度改正は「どさくさに紛れてスイスイと変えられていく」と。
 まったく目まぐるしいですね。老人医療費など,あれよあれよと言う間もないくらい。などなどと話合っておりまして,ふと,医療機関の看護体制に2交替勤務体制導入が模索されていることが頭をよぎりました。
 この制度導入では看護婦側からの反対発言もなされておりますが,患者さんの側に立つと答えは出ていると思えます。
 2交替勤務の看護体制は,国立病院では反対意見をよそともせず導入されましたが,付き添い看護の全面廃止で新看護基準を採用した中小の病院では,大半がこの勤務体制です。したがって入院患者さんはこの2交替制勤務の看護を身をもって体験しています。
 その体験談から取り出される状況は,医療の安全性という視点から大きく逸脱しているものであることは確かです。
 例をあげると次のような状況。
 50歳女性。胆嚢摘出術前夜のこと。夜間から持続点滴(カテラン針挿入)が開始された。点滴注射薬液ABCのボトルが毎分単位注入量計算で数本合理的にセットされ,点滴用スタンドにぶらさげられる。翌朝までの注射液。消灯後,看護婦は1度も見回りに来ない。患者は下剤服用のため数回排泄に行く(重いスタンドを引きずり転んだ患者もいる)。ナースコールの対応は鈍く,早朝患者が目覚めたら,薬液は空っぽ。飛んできた看護婦は仮眠室から直行の服装。カテラン針は交換となった……。
 「重症の人がいて看護婦さんは忙しかったから」と患者さんは,恐怖に近い不安を自らの胸に納めあきらめる。「大事にならなくてよかった……」と。
 類似の体験は多くある。それゆえにこの制度はスイスイ通ってほしくないものです。