医学界新聞

医療保険制度の抜本的改革に向けて

厚生省「医療保険福祉審議会」が会合を重ねる


診療報酬体系の見直しを公開論議

 厚生省の諮問機関である医療保険福祉審議会制度企画部会(会長兼部会長=東京都歴史文化財団理事長 金平輝子氏)の初会合が,さる11月12日に開かれ,以降11月28日,12月10日と公開による検討を重ねながら,診療報酬体系の見直しが進められている(2267号に一部既報)。
 本年8月に,厚生省は医療保険制度抜本改革案をまとめ,与党医療保険制度改革協議会に提示。これを受けた同協議会は,「これまでに例を見ない急速な人口の高齢化,医療の高度化などによって,医療費は増大の一途をたどっており,このまま放置すれば21世紀初頭には医療保険制度が破綻してしまうことは明らか。限られた医療資源に無駄がないか,効率的であるかとの観点から,国民の立場に立った医療提供体制と医療保険制度の両面にわたって抜本的な改革に着手することが急務である」を基本とする「医療保険制度指針」を同8月29日に取りまとめ公表した。これによると抜本改革の実施は2000年をめどとしている。

国民が見える内容のものを

 本審議会(部会)では,この「与党案」をたたき台に,診療報酬,薬価基準,老人保険の分野での見直し論議が行なわれるが,厚生省としては明年3月までに意見をまとめたうえ,2000年の実施に向けて次期国会に法案として提出する意向である。
 なお,第1回目に出席した各委員からは「医療を受ける側がわかる制度を進める必要がある」,「医療消費者の望むものは何かを踏まえた論議を。改革には国民の同意が必要」,「国民がわかるように,情報公開を前提に」などの意見,提案があった。また初の看護職から委員に選出された南裕子氏(兵庫県立看護大学長)は,「医療の提供側からの視点ではなく,受ける側の視点が重要。病気にならないための早期予防がコスト減につながる。生活習慣病の予防など,健康に視点を置いた診療報酬化も考慮してほしい」と意見を述べた。
 さらに2回目の会合では,厚生省が提出した「国立病院・療養所の収支状況」をめぐり,「診療収入が歳入の69.9%を占めるものの,経営費が82.3%となっているが,診療収入の中で経営を賄うようにするのが基本」とする意見や,「医療職の技術評価に対する報酬について論議されようが,技術の難易度などに具体性がない」,「患者の真の需要からとらえられていない。情報弱者である国民にわかるシステムの構築を」などの意見が噴出。部会では今後の方向性は確認できたものの,基本的な部分での委員の合意がなされず,次回審議会に厚生省側が再度論点をまとめたものを提出することになった。なお,医療提供体制については別の審議会で諮られるが,国民に開かれた医療の実現をめざした論議が進められようとしている。