医学界新聞

聖ルカ・ライフサイエンス研究所公開シンポジウム

今後の医療機能評価のあり方を探る


国際的な病院評価の潮流

 さる10月30日,聖ルカ・ライフサイエンス研究所主催の公開シンポジウム「欧米における病院評価の発達と,日本における今後の病院評価の見通し」が,聖ジョン・メモリアルホールで開催された。
 基調講演として今中雄一氏(九大助教授)が「医療機能評価の現状と未来―国際的潮流と日本における展開」をテーマに,欧米の最近の状況を中心に解説。ここ数年,米国のJCAHO(医療機関認定合同委員会)では「組織運営の改善」に注目し,評価体系を再構築している。特に「組織のパフォーマンスの改善」と「情報のマネージメント」の評価に力を注いでおり,一方,日本における病院評価ではこの視点が欠けていることを指摘した。さらに,これら一連の考え方の基本となる「トータル・クオリティ・マネージメント(TQM)」を紹介。TQMとは組織のパフォーマンスを向上させることで経営基盤を強化しようとする考え方で,現在,欧米での病院機能評価に反映されている。また,ミシガン大学のTQMプログラム導入により得た経済的利益が支出の3倍となるデータを披露した。
 そして,最近の潮流として,「evidence-based clinical practice」と呼ばれる,evidence-based medicineがいかに実践されているかを組織的に評価する考え方が欧米で台頭してきたことを報告。今後の日本の方向性を示唆するものであった。

日本の医療評価の問題点

 続いて,岩崎栄氏(日医大)を司会に,シンポジウムが企画された。
 現在の日本の病院機能評価については,野辺地篤郎氏(日本医療機能評価機構)が,現在行なわれている病院評価方法を,サーベイヤー(評価者)の立場から解説。一方,看護面からの評価について,内田卿子氏(日本医療機能機能評価機構)が看護の今後の課題として,「専門領域の拡大と看護能力の評価と資格,特に外来,在宅などの継続看護があげられる」と述べた。
 最後に福井次矢氏(京大)が,医師の臨床能力の評価をテーマに講演。アメリカでの「臨床技能と患者ケア能力の評価」項目や,自身が考える臨床医の基本能力を例にあげて解説。また,最近注目されているevidence-based clinical practiceにも触れ,日本の臨床医にとっても重要になると指摘した。
 演題終了後,岩崎氏がアメリカに始まった病院評価について概説し,「医師の供給源となる大学が変わらない限り,さまざまな医療問題は解決しない」と苦言を呈した。
 1937年から病院評価が開始されたアメリカでは,評価者が450名と,日本の20名のスタッフに比べて人材が充実しているとの発言の後,最後に日野原重明理事長は「今後,患者や市民への教育が日本の医療問題の解決につながる」とまとめた。