医学界新聞

第2回臨床疫学ワークショップ開催される

臨床研究に関心をもつ医師,看護婦や大学院生を対象に


 さる6月21-22日,東大医学部総合中央館において,「第2回臨床疫学ワークショップ」(東大国際交流室主催)が開催された。このワークショップでは,これまで研究デザインや結果の分析法などの教育を受けた経験はないが,臨床研究に興味のある臨床に従事する医師,看護婦および大学院生を対象としており,全国から約30名の参加者を集めた。
 昨年の第1回に引き続き,オーストラリアのニューキャッスル大学臨床疫学生物統計学センターから3名の講師を招待し,また日本からは,ファシリテーターとして伴信太郎氏(川崎医大),大生定義氏(三井物産診療所)の他,東大国際交流室から福原俊一氏,ジョセフ・グリーン氏が参加した。

プログラムの内容

 今回のプログラムでは,まずはじめに臨床疫学の基本的な考え方を,特に(1)臨床研究論文の批判的読み方(critical appraisal),(2)臨床研究のデザインの仕方,(3)臨床研究の結果分析のための統計手法(特にメタアナリシス)の3点について講義形式で学ぶ。その後,10人程度の小グループに分かれ,それぞれニューキャッスル大の講師と日本のファシリテーターが1人ずつサポートし,(1)critical appraisal(論文の読み方)の実習とディスカッション,(2)参加者による臨床研究計画の発表と検討会を行なうというもの。ディスカョッションはすべて英語で行なわれる。
 以下,ワークショップに参加した大学院生のレポートを掲載する。


科学的根拠に基づく診療を行なうために
ワークショップに参加して

Suzane Kioko Ono Nitta
東京大学大学院医学系研究科内科学専攻

 私は現在,東大大学院医学系研究科内科学専攻博士課程に所属するブラジルからの留学生で,今回オーストラリアのニューキャッスル大学―東京大学の主催による「臨床疫学ワークショップ」に参加しました。
 医学大学の臨床医は,研究,教育,臨床という3点に関して重要な責任を持つと考えております。そのためには最新の,精選された,適切な情報を論文から読みとり,自分でも良質の研究プロジェクトを実施して,その成果を正確に記述し,実際の日々の臨床に応用しなければなりません。しかし,論文の数は無数にあるうえに,著者はそれぞれ異なる主張をしており,先に述べた良質の情報の収集と応用はたやすいことではありません。今回のワークショップに参加して,このようなジレンマに対する解決の糸口を勉強することができました。

論文を批判的に読む

 手はじめとして,医学雑誌に掲載された論文とそのデータを批判的に読むこと,さらにRandomized, Controlled Trials, Meta‐Analysis, Protocol Development, Introduction to Screeningを学びました。その後,論文の批判的読みかた,Meta Analysisの質の査定,研究プロトコルの作成やスクリーニングの実施方法についてそれぞれ実習を行ないました。
 このワークショップに参加して,日本とオーストラリアという2つの国のプロフェッショナルから学べたことは大きな収穫でした。日本のいろいろな地域から集まったさまざまな分野の専門医と話し合い,それぞれが大学を卒業して実際に臨床に携わるようになっても,高度な専門知識の獲得,実際の臨床においてより優れた臨床態度を身につけることなどについて,実に熱心に考え,学ぼうとしていることを知りました。また,論文を批判的に読むことができ,良質のプロトコルを作成する能力が身につけば,よい論文を書くことができ,さらには患者さんを科学的な根拠(evidence)に基づいて診療することができると皆で話し合いました。この場を借りてファシリテーターの先生方にこのワークショップの成功をお祝いしたいと存じます。同時に,このようなワークショップが日本だけでなく海外においても開催されることを希望します。