医学界新聞

連載 ― WHAT'S COOL IN TECH AND MEDICINE

最新テクノロジーのトピックス

永田 啓(滋賀医科大学眼科・医学情報センター)

[7]コミュニケーション技術


コミュニケーションの広がり

 誰かに自分の考えていることを伝えたり,自分が理解していることを説明したり,してほしいことの手順を間違わずに伝達しようとしてもなかなかうまくいかない,そんな経験をしたことはありませんか。コミュニケーションというのは,言葉で言ってしまえば一言ですが,その中にはさまざまな要素が含まれています。その上,コミュニケーションの範囲はどんどん広がっています。
 一昔前でしたら人と人とのコミュニケーションは直接会って話す,電話をする,手紙を書くといった方法が主でしたし,使う言葉も日本語が主でした。しかし,最近では,高速の通信網や,マルチメディア技術の普及,数えきれないくらいの携帯電話,網の目のように張りめぐらされたインターネットなどのおかげで,コミュニケーションの手段も多様化し,1人の人間がコミュニケーションできる範囲は地球規模に広がっています。

医療に必要な コミュニケーション技術

 医師やナースになろうとする方は,純粋に基礎研究に没頭できるわずかな人を除いては,これからコミュニケーションに膨大な時間を費やすことになります。患者さんやご家族とのコミュニケーションは基本中の基本ですが,医療者同士のコミュニケーションも大切です。この他にも,病院と診療所の間といった医療組織間のコミュニケーション,さまざまな情報システムとのコミュニケーション,高度にコンピュータ化された検査機器や治療機器に適切な指示を与えたり,データを読みとったりといったマシンとのコミュニケーションなども必要とされてきます
 従来の「人間同士が直接会って日本語を通じてコミュニケーションする」ための基本技術から,医療に必要なコミュニケーション技術はずいぶんと広がっています。基本技術に関しては,さまざまな教育機関で取り入れられていますし,文献もたくさんありますから,それ以外のコミュニケーション技術について少し考えてみましょう。

英語,できますか?

 昔から医療や看護の文献は日本語だけではなく,外国語で書かれたものを参考にする必要がありました。古くはドイツ語,最近では英語が多いようです。臨床の現場でも外国人の患者さんとコミュニケーションをとらなければならないという場面が増えてきました。英語が必ずしも通じるわけではないのですが,共通語としての英語は,ここ数年とみにその割合を増やしてきました。なぜでしょう。
 理由としては,わが国では6年間にわたる英語教育を受けている人が多いことや,英語圏の国との付き合いが多いことなどがあげられます。しかし,ここ数年の世界的な変化はインターネットによるものが大きいと思います。インターネットでは共通語は英語です。コンピュータを動かすときの命令語も,プログラミング言語も英語をベースにしています。www(world wide web)上では,たくさんの言語で情報が提供されていますが,世界中の人々に読んでほしい場合は,自分の国の言葉の他に,英語で書いたページを必ず用意することになっています。(医学書院ホームページのEnglish Page
 研究論文を書くときにも,よりたくさんの人に読んでもらいたい場合は英語で書くことになります。これから英語は避けて通れないコミュニケーションの技術となってきます。

キーボード打てますか?

 コンピュータアレルギーやキーボードアレルギーという言葉が,つい最近までありました。皆さんはいかがですか? キーボードは問題なく打てますか?
 電子カルテはもうすぐそこまで来ていますし,電子メールをはじめとした新しいコミュニケーションでは,キーボードを使って自分の言いたいことを主張する必要がでてきています。論文を書く場合にも,最近は紙ではなく,フロッピーや電子メールでの投稿を義務づけている学会誌も外国では増えつつあります。電子データとして自分の考えや主張を発信することも,重要なコミュニケーション技術となっていくでしょう。
 音声認識や自動翻訳が,キーボードや英語を使わなくてもいいようにしてくれる,と昔から言われていますが,実現にはまだ時間がかかるようです。意識せずにキーボードを打ちながら文章を考えられるように,学生の内に頑張って練習しておいてください。もっとも,読者の中には小学校からコンピュータを使っていて,キーボードなんて当たり前という人も多いと思いますので,これはコミュニケーション技術の移行期の取り越し苦労かも知れません。

ネットワークを使えますか?

 学生にインターネットのアカウントを与えている大学は,工学部ではほとんどですが,医学系の大学でも少しずつ増加しています。アメリカでは電子メールやwwwで授業の変更の通知や資料の提供,レポートの提出,中には試験も行なっている所があります。自宅や下宿にコンピュータとネットワーク回線の接続を義務づけている大学もあり,今後もこうした流れは加速していくでしょう。wwwや,さまざまな学術データベースで自分の知りたいことを調べたり,先生や社会とコミュニケーションをとることが当たり前になる日はそう遠くないと思います。いかがですか?
 何かご意見のある方は,nagata@sums.shiga-med.ac.jpまでお知らせください。