医学界新聞

第94回日本内科学会開催される

「人と人・人と自然・人と医学」をテーマに


 さる4月24-26日,第94回日本内科学会総会が,鎌田武信会頭(大阪労災病院)のもと,大阪城ホールをメイン会場に開催された。
 本学会のテーマは「人と人・人と自然・人と科学―System Biomedicine」。会頭演説で鎌田氏は同テーマを冠し,「人類は遺伝子と環境に制御(支配)されている(これは今学会のシンボルマークに象徴されている)」との視点から,今後の内科学のあり方を述べ,学会場正面に設置された大画面にイメージビデオを放映するという演出で,聴衆を圧倒した。一方,早石修氏(大阪バイオサイエンス研究所)による特別講演が,「睡眠の謎―眠りを調節する分子機構」をテーマに行なわれた。
 このほかシンポジウムに,「アポトーシスと内科疾患」,「内科疾患と抗血栓療法」,「体液調節と抗血栓療法」の3題が企画され,多くの聴衆を集めた。
 また内科セミナーには,(1)「内科各分野における最近の動向Ⅵ」と(2)「CPCから学ぶ診断へのアプローチ」が,パネルディスカッションでは「多施設臨床試験のあり方―科学性と倫理」が企画された。さらに,教育講演18題,宿題報告5題と,内科領域の最新のトピックスをテーマに構成された。
 総会では,昨年の第93回内科学会で発表された一般演題の中から,40歳以下を対象とした第10回日本内科学会奨励賞が,前会頭の黒川清氏(東海大医学部長)より11名の受賞者に授与された。



内科領域の最近の動向

 内科学を10の分野に分け,毎年5つずつを各分野の第一人者によって解説する内科セミナー(1)(司会=奈良医大 成田亘啓氏,香川医大 松尾裕英氏)では,内分泌(関西医大 稲田満夫氏),代謝(自治医大大宮医療センター 金澤康徳氏),消化器(広島大 梶山梧朗氏),腎臓(川崎医大 大澤源吾氏),免疫(福島医大 粕川禮司氏)の5分野ににおける最近の動向を報告。
 特に代謝領域では,金澤氏が肥満細胞より分泌され,食欲を調節する物質レプチンと肥満との関連について解説。またインスリンによる糖輸送活性化機構や,グルコキナーゼ遺伝子変異によるインスリン分泌機能低下など,最近徐々に解明されつつある糖尿病の病態機序に関する知見が述べられた。
 その他,困難とされていた腎疾患の遺伝子治療の新しい可能性や,肝癌の診断におけるテロメラーゼの役割,慢性関節リウマチなど免疫疾患の発症にかかわるとされるスーパー抗原の概説など,多岐にわたる内容が提示された。

臨床試験のあり方を考える

 パネルディスカッションは,「多施設臨床試験のあり方-科学性と倫理」(司会=九大 藤島正敏氏,信州大 柳澤信夫氏)のテーマで行なわれた。ここでは藤島氏のほか北畠顕氏(北大),平井俊策氏(都立神経病院),西條長宏氏(国立がんセンター研),阿部重一氏(前厚生省薬務局審査課)がパネリストとして発言。現在の臨床試験の問題点の指摘や,改善のための提言がなされた。この中で阿部氏は,新薬の治験に関して,改定GCP(「医薬品の臨床試験の実施に関する基準」,本年4月一部施行,1999年4月完全施行予定)の基本的考え方や改定のポイントを解説し,「これによって治験制度の大きな変化が予想される」と述べた。

CPC形式で剖検の重要性を

 内科セミナー(2)(司会=順大 佐藤信絋氏,島根医大 小林祥泰氏)は,突然転帰をとり剖検まで行なわれた症例が島根医大と市立札幌病院から提示され,司会のほか座長と症例提示者,コメンテイターが登壇し,CPC形式でディスカッションを行なうというユニークなもの。実際の臨床経過と剖検結果を対比させ,患者や疾患への理解を深めることの重要性を強調すると同時に,剖検の重要性とそれによって得られた情報を臨床にフィードバックすることの有効性が浮き彫りにされた内容であった。そのほか,臨床疫学の知識を背景とした,内科医に必要とされる診断や治療法選択への思考法が概説された。