医学界新聞

ホスピス・緩和ケア病棟の標準化をめぐって

第10回日本サイコオンコロジー学会・第2回日本緩和医療学会
 初の合同大会が開催される


 第10回日本サイコオンコロジー学会(会長=国立がんセンター東病院 志真泰夫氏)と第2回日本緩和医療学会(会長=同病院長 海老原敏氏)の合同大会が,さる3月26-28日の3日間,阿部薫大会長(国立がんセンター総長)のもと,千葉県柏市の柏市民文化会館で開催された(関連記事を2237号で既報)。
 今合同大会では,特別講演2題の他,合同シンポジウム「インフォームドコンセントの光と影」(司会=埼玉県立がんセンター総長武田文和氏,国立がんセンター東病院副院長 吉田茂昭氏)や,両学会主催によるワークショップが開かれた。本紙では日本緩和医療学会主催のワークショップを取り上げ紹介する。



人生総決算のサポートをホスピスで

 ワークショップ「ホスピスケア・緩和ケアの標準化をめぐって」(司会=阪大教授柏木哲夫氏,志真泰夫氏)では,まず恒藤暁氏(淀川キリスト教病院)が「全国ホスピス・緩和ケア病棟連絡協議会」が実施した全国調査をもとに結果報告。緩和医療施設(ホスピス)は1997年3月現在で全国に31施設となったことや緩和ケア施設基準を解説するとともに,患者・家族へのケアプログラムの基準要件として,ケア計画,症状緩和,チーム医療,ボランティア,死別後ケアなどの8項目をあげた。また,今後の課題としては,自己決定権,緩和医療の実践(専門医制度の確立と検討),在宅医療の充実,臨床研究などを指摘した。
 続いて石森携子氏(淀川キリスト教病院)は,M.メイヤロフのケアリング理論をもとにした「ホスピスにおけるケアのありかた」を口演。霊的ケア(スピリチュアルケア)について語った。
 また丸口ミサエ氏(国立がんセンター東病院)は,症状コントロールをマスターするには,臨床経験のある看護婦でも時間がかかることから教育の必要性を,また平均60歳代の緩和ケア病棟(PCU)に入院してくる患者の中に20~30代の人が増えてきたことから「若い患者の心のケアの問題が今後の課題」であることを述べた。
 さらに山崎章郎氏(聖ヨハネ会桜町病院ホスピス)は,1995年10月~1996年9月に入退院した患者164名の概況を報告。90%の稼働率で,平均在院日数が41日であったことや,死亡直前に症状コントロールを目的に105名にセデーションを行なったことを明らかにした。また山崎氏は,本年4月に文献,臨床例などの資料を集めホスピスケアの理念や実践を研究することを目的とした「聖ヨハネホスピスケア研究所」の開設を発表した。
 渡辺亨氏(国立がんセンター中央病院)は,メディカルオンコロジストの立場から発言。「緩和医療と終末期医療の区別が必要」と述べるとともに,「緩和医療には,科学的な根拠に基づいた治療方針決定をするために,客観的判断のできる,複数の専門領域の協調が重要」と指摘した。
 最後に石谷邦彦氏(東札幌病院長)が,「ホスピスケア・緩和ケアの標準化をめぐって」と題して特別発言。「標準化を考えるには,structure, process, outcomeに加えてcost effectiveを評価できる内容であること」と述べ,またホスピス・緩和ケア病棟の合理的運営のためにEvidence Based Medicineの必要性を強調した。
 総合討論の場では,(1)スピリチュアルケアとホスピスケア,(2)一般病棟とPCU,ホスピスの関係,(3)抗癌剤治療,(4)在宅ケア,(5)PCU,ホスピスへの移行時期,(6)Evidence Based Medicine,(7)ホスピスのスタッフ数と人件費などに関する熱い論議が壇上,フロアで交わされた。その中で「一般病棟でもホスピスケアは可能ではないか」との質問に山崎氏は,「一般病棟では制約がある。末期の患者の人生の総決算のサポートがホスピスにはある」と答えた。