医学界新聞

日本初の医療の情報化に関する国際コンファレンス

Healthcare Information World 97が開催


 さる3月22-23日の両日,Healthcare Information World97(主催:IDGワールドエキスポ/ジャパン)が,横浜市のパシフィコ横浜を会場に開催され,コンファレンスや併設展示会の他,企業セミナー,特別イベント(1)「Tele-Medicineに関するミニシンポジウム」,(2)「産婦人科情報処理研究会・日本医療情報学会看護情報システム有志研究会」が催された(本号「Medical Information」および2238号に関連記事を掲載)。

医療情報ネットワークの進化に期待

 メインとなったコンファレンスのテーマは,「診療支援としてのコンピュータ医用画像とネットワーク」。オープニング企画として,開幕特別講演や基調講演の他,サラ・マンディール氏(WHO医療情報局ディレクター兼アドバイザー)による海外特別講演「地球規模における医療情報サービスへの道程-WHOの医療情報化政策と可能性」が行なわれた。引き続き2会場で,(1)電子カルテ(3題),(2)医用画像(5題),(3)ネットワーク&遠隔医療(5題),(4)インフォームドコンセント&医学教育(2題),(5)病院経営&病院経営(2題)など,海外からの演者を含め合計17セッションで,電子カルテの現状と将来や,バーチャルリアリティの有効活用,通信衛星を用いた画像診断などの講演が行なわれた。
 開幕特別講演「理想的な国民医療と医療の情報化-なにが改善されなければならないか」を行なった今井澄氏(参議院議員/前厚生委員会委員長)は,医療保険制度に関して「政府管掌保険は大幅な赤字が見込まれる。国庫負担増は難しく,患者の自己負担増がなければ国民皆保険制度は成り立たない」と述べ,抜本的医療制度の改革の必要性を訴えた。また,21世紀のキーワードに「仮想統合医療供給システム」をあげ,情報システムの構築,医療情報の公開や遠隔医療に関する研究が,厚生省研究班で検討されていることを明らかにした。
 一方開原成允氏(東大教授)は基調講演「医療の情報化は何をもたらすか」で,「医療を変えつつある技術として,(1)診療データベース(医療内容分析によるフィードバック),(2)コンピュータネットワーク(マルチメディア,電子メールの普及),(3)映像電送(遠隔,在宅医療支援)がある」と述べた。また,大学医療情報ネットワーク,大学病院衛星医療情報ネットワークを紹介する一方,インターネット化による誤った情報の流布の危険性,秘密保持の問題なども指摘した。
 さらに坪井栄孝氏(日本医師会長)は「医療の情報化政策についての提言」と題し特別講演。「日本医師会がめざす国民医療情報サービスとは」を論じ,(1)医学の進歩(専門分化,新技術の普及,情報量の増加),(2)情報技術の進歩(高速通信,大量保存,機器普及),(3)社会の変化(高齢化と医療費拡大,患者価値観の多用化,権利意識の拡大)を情報化社会と医学の関連要因にあげ解説。また,日本医師会がホームページを開設したことや日医総合情報ネットワークを紹介。その構築の意義と役割を述べ,最後に「医療・保健・福祉サービスを支援するための包括的情報ネットワークの構築が必要」と,医療の情報化政策について提言を行なった。