医学界新聞

「21世紀に向けた介護関係人材育成のあり方について」

文部省 「21世紀医学・医療懇談会」第2次報告の概要


 文部省「21世紀医学・医療懇談会」(会長=私立学校教職員共済組合理事長 浅田敏雄氏)の第2次報告「21世紀に向けた介護関係人材育成のあり方について」が,さる2月21日付けで公表された。
 高齢者にかかわる介護サービスの提供体制の整備が急がれ,人材育成,確保を図ることが緊急課題であると述べる一方で,福祉に関する教育,ボランティア活動,健康教育の推進を打ち出す内容となっている。本紙では,報告の概要を以下に掲載する。


●報告の背景

 高齢化の進展に伴い介護を要する高齢者が今後急増すると見込まれる中で,現在新たな介護保険制度創設の準備が進められており,21世紀に向けて高齢者福祉,とりわけ高齢者介護にかかわる福祉・医療・保健サービス(以下「介護サービス」という)提供体制を整備することが急がれている。
 21世紀医学・医療懇談会においては,介護サービスが円滑に提供されるために必要となる介護関係人材の育成のあり方について,昨年9月から教育部会を中心に検討を行ない,さる2月10日の懇談会においてその議論をとりまとめた。

●報告の概要

介護関係人材育成の視点
 本報告においては,介護関係人材育成について,次の3つの視点から提言がとりまとめられている。 (1)専門的知識・技術と豊かな人間性を兼ね備えた資質の高い人材の育成 (2)福祉,医療,保健が連携した総合的なチームケアの推進 (3)介護・福祉についての認識の高揚

介護関係人材育成のあり方--専門教育の充実と連携の強化
専門教育の充実
(1)専門職育成の推進
 介護サービスの量的充実の必要性に伴い,介護サービスに携わる専門職の果たす役割が増大する。また,要介護高齢者等の心身の状況等に応じ多様なサービスを提供するため,高い技術を持つ専門職や,要介護者に対するサービスの調整に当たるケアマネジャーとしての役割を果たす専門職が必要になる。このため,
●社会福祉士,介護福祉士,看護婦(士),保健婦(士),理学療法士,作業療法士の育成にかかわる大学学部・学科等の整備・充実
●医療サービス内容の変化に対応できる医師,歯科医師,薬剤師を育成するため,高齢者医学,歯学,薬学分野の教育研究体制の整備等教育内容の改善充実
●これらの人材育成にかかわる大学等における人間教育,教養教育の重視の徹底 が重要になる。文部省においては,関係省庁と十分連携をとり,専門職にかかわる将来の需給関係を踏まえて,必要な人材育成を進めていくことが必要。
(2)生涯学習体制の整備
 介護に携わる専門職にさらに多様な学習の機会を確保するため,今後,夜間大学院の開設や研修生の受入れ等社会人を対象とした大学・大学院の積極的な取組みが求められる。また,福祉施設関係者等に対しても,同様の取組みが望まれる。
(3)社会福祉,看護に関する専門的研究の推進,研究教育者の育成
 社会福祉,看護に関する総合的,専門的な研究の振興と研究教育者の育成が必要であり,現場の実践経験を持つ者を対象とする大学院の整備を進める。
福祉,医療,保健に関する職種間の連携の強化
 各職種の育成段階から共通の価値観を育て,職種間の連携を強化するためには,
(1)介護関係人材育成にかかわる大学等において,介護体験実習を行なう等の取組み
(2)例えば,介護サービスに携わる職種すべての学生・生徒に合同で介護・福祉現場での実践活動を経験させる
(3)基本的共通カリキュラムの調査研究 などが重要になる。
 また,福祉関係学部・学科と医療関係学部・学科間における単位互換制度の活用や編入学の促進などの教育内容の工夫・改善および福祉,医療,保健関係の複数の資格を取得しやすいコースの設置など大学・大学院の積極的な取組みが望まれる。
地域の実情に即した介護関係人材育成にかかわる調査研究の実施
 大学等が行政側,民間関係者等と協力して介護関係人材育成を進めるため「介護関係人材育成連絡協議会(Care MAC=Care Man・power Conference)」を設置し,実習の受入れ,生涯学習充実方策等について連絡調整,調査研究を行なう。

福祉に関する教育,ボランティア活動, 健康教育の推進
福祉に関する教育
 小・中・高等学校段階の児童・生徒について,家庭,地域,学校で介護体験等の体験活動を充実する。
 大学等でも全学生が何らかの介護経験を積むようにするなどの教育内容の工夫や,教育養成カリキュラムにボランティア活動や福祉活動等の体験の導入を検討する。
ボランティア活動
 学校教育,社会教育を通して,一層積極的にボランティア活動が行なわれるよう,国等においてその条件整備などの支援を行なう。中学校,高等学校の進路指導においては,偏差値による指導のあり方を改め,将来に対する目的意識を抱いて福祉,医療,保健関係学部への進学を決定する能力を身につけさせる指導へと転換する。
 大学等の入学者選抜においても,福祉施設での体験活動やボランティア活動等を積極的に評価するなどの工夫,改善を進める。
健康教育
 児童生徒の成長発達段階に対応した一貫した健康教育を行ない,子どもたちが健康の増進や体力の向上の必要性を十分理解した上で,自ら健康を増進する能力を育てる。