医学界新聞

第19回日本POS医療学会開催

「みんなで使おうPOS」をテーマに


 POS(Problem Oriented System=問題指向システム)を用いながら,より質の高い医療をめざすことを目的に,第19回日本POS医療学会が,さる3月1-2日の両日,畑尾正彦会長(日本赤十字武蔵野女子短大教授)のもと,東京・武蔵野市の亜細亜大学で開催された。
 学会では,特別講演「医療現場に届けたい患者の声」(COML代表 辻本好子氏)の他,一般演題発表,シンポジウム,ワークショップ,および日野原重明氏(聖路加看護大学長)による会頭講演が行なわれた。

POSの現状と展望

 シンポジウム「みんなで使うPOSの現状と展望」(司会=聖路加看護大 岩井郁子氏,広島市立安佐市民病院 岩森茂氏)では,医師,看護婦,栄養士,薬剤師,作業療法士などさまざまな職域から6人のシンポジストが医療の現場におけるPOSの現状についての報告を行ない,これからのチーム医療のあり方を論じた。
 この中で木村三香氏(東北公済病院)は,東北公済病院におけるPOSへの取り組みを紹介。5年ほど前からプロブレムの表現として看護診断名を導入したことについて,「医師からの反応は賛否両論。しかし,ただ1枚の用紙を共有する以上の刺激を医師,看護婦の双方に与えていると実感する」と語り,POSが医療の活性化にも役立っていると述べた。
 また,長浜幸子氏(昭和大藤が丘病院栄養科),井上忠夫氏(聖路加国際病院薬剤部),鷲田孝保氏(茨城県立医療大作業療法学科)の3氏は,POSを利用し,各医療専門職が患者の情報を共有することで,患者の抱える問題についてそれぞれの立場からアプローチが可能と発言。患者を理解し,分析することで,全体として問題を解決する,チーム医療体制の構築に強い意欲を示した。

チーム医療に患者の参加を

 「POSの発想のルーツとその展開」と題して会頭講演を行なった日野原氏は,Lawrence Weedによって開発された問題解決技法が,日本に導入された経緯を解説。また,日本の医療におけるPOSの現状およびこれからの展望について語った。
 日野原氏は,POSにおける記録を「患者の問題が,その人のQOLを大切にしながら最も効果的に解決されるように,いつも全人的な立場から,取り上げ,考え,かつ行動する一連の課程の記録である」と定義した上で,現在の医療の現場においてはこの記録のもととなるデータの信頼性が低いと指摘。明白な根拠に裏づけされたデータ(Evidence Based Data)をもとに記録が行なわれるべきであるとした。
 また,これからのPOS医療においては患者自身も問題解決のためのデータを提供すべきであるとし,「そのためには患者に問題を言語化する技術を身につけさせる教育を施すことが不可欠」と述べ,さらにデータの提供だけでなく,患者の参与による病歴の作成や,患者による医療の質評価など,医療における患者の参加の可能性を示唆し,「チームヘルスケアに患者,生活する家庭,社会,コミュニティも含めて引き入れ,ともに医療を行なっていくべきである」ことを強調した。